高校時代に始めたウェブサイト運営の挫折

 私が最初に始めたのは、携帯電話向けのウェブサイトでした。それは、たしかまだ高校生のときのことです。私の友人が作った小さなウェブページを、チームで運営したのがすべての始まりとなりました。

 当時はまだ、着信メロディのダウンロードはできなかったので、着信メロディの楽譜と、その楽譜に合わせた音の設定情報(ビブラートの設定など)を参照できるようにしました。自分たちでも着信メロディは作成しましたが、それ以上にユーザーからの投稿を受けつけ、管理者の私たちがそれを選抜することで、かなり質の高い着信メロディの楽譜だけを提供していたと思います。
また、着信メロディと同時に、待ち受け画面も提供していました。

 当時は、6Kや4Kバイトといった画像容量の制限がありました。そのため、フォトショップの機能を使い、手作業で画像容量を調整し、ソフトウェアで圧縮するといったように、こちらも画質の良い待ち受け画面を提供していたと自負しています。

 そのほかにも、関連するサービスを提供していたいわゆる「勝手サイト」で、当時としてはかなりのアクセス数があり、勝手サイトを特集した雑誌にもいくつか掲載されていました。

 そのときは、この事業領域がまさに立ち上がりを見せていた時期です。そのため、サービスが急拡大していく強い熱気を肌で感じることができました。そして、10代の私たちでも、世の中のたくさんの人たちが使えるサービスを作れることに、大きな興奮を感じていました。

 携帯サービスのまさに黎明期に、小さな片隅の当事者であったとはいえ、その熱気の一部として活動ができたのは、今考えてもとても貴重な経験だと思います。

 ただ、私たちは、経営について何も知りませんでした。

 当時はまだ、たとえば着信メロディに対してどのように著作権料を徴収するべきかの答えも出ていませんでした。また、携帯電話の広告モデルもしっかりと確立されていなかった時代です。キャリアを経由した課金も、煩雑な手続きを考えると非現実的でした。

 そのため、急速にユーザーは拡大していたものの、知識のない私たちは、このサービスを閉鎖せざるを得ない状況になります

 これはまさに、挫折と呼べる経験でした。

 当然、このサービスを途中で閉じなければならなかったことに、じくじたる思いを感じていました。また、数年後、自分たちより“格下”だと思っていた同じようなサービスが、ある新興企業に数十億円で買収されたときには、言い知れない気持ちを抱いたのを覚えています。