去る2月26日、金融庁の有識者検討会が、日本版スチュワードシップコードを公表した。同コードは、その取締役会に対し、企業価値極大化の責務があることを認識させる「外圧」として機関投資家の役割を明確にするものと位置付けられる。コーポレートガバナンス改革と、今回の日本版スチュワードシップコードの普及という、「車の両輪」がうまく回り始めた時に初めて、日本企業にはびこる悪弊が見直しを余儀なくされ、真の日本企業の改革が実現するものと期待される。

「物言わぬ株主」が当たり前だった

 去る2月26日、金融庁の有識者検討会が「責任ある機関投資家の諸原則(案)」(日本版スチュワードシップコード)を公表した。そもそも投資顧問・生損保・銀行・年金などの機関投資家は、原則として何らかの受益者のお金を受託して運用しているものであり、それらの機関投資家が、投資先の企業経営者に対して、その企業価値を上げるように迫ることは、受託者責任そのものである。

 しかし、これまで日本の機関投資家は、「物言わぬ株主」であるのがいわば当たり前であり、極論すれば、企業と機関投資家の「馴れ合い」で物事を進めてきた感が強い。株主総会でも、議案に対しては、総会を開く以前に「友好的な」機関投資家の賛成票が集まっているので、企業経営者たちは、何らの心配もなく議事を進行することができた。

 逆に、反対票を投じたり、総会の場で反対意見を述べるような投資家は「敵対的」とされて総務部あたりからマークされ、あたかも総会屋であるかのような扱いを受け、厳重なる「対策」が練られるというのが日本の慣習であったと言っても過言ではあるまい。それが可能だったのは、日本では、これまで、株式の持ち合いに象徴される、企業経営者相互のもたれ合いの構図が蔓延していたからである。機関投資家の負う受託者責任は忘れ去られていたと言っても過言ではない。今般公表された日本版スチュワードシップコードは、そういう日本的慣習を打破し、企業経営者に少しは緊張感を持たせることができるのだろうか。