16日に、今年最後のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が出ます。これは、目先のドル/円の運命を左右する役割を演じる可能性もあるのではないでしょうか。

 今回のFOMCが注目されるのは、米金利が急低下している中で行われるからということが1つです。米長期金利は、15日に2.5%割れ寸前まで低下しました。これは過去の実績からすると、極端な「下がり過ぎ」といえるものです。

 下図は、米長期金利の200日移動平均線、5年移動平均線からのそれぞれのかい離率を見たものです。

 これを見ると、米長期金利は200日線から過去10年間で最大のマイナスかい離率になり、5年線からも過去30年間で最大のマイナスかい離率になっているのがわかると思います。つまり米長期金利は短期的にも長期的にも、空前の「下がり過ぎ」になっている可能性があるわけです。

 なぜこれだけ、米長期金利が急低下しているのか。その原因の1つは、明らかにFOMCでしょう。今回のFOMCでは、0.5%以上の利下げが予想されています。実際そうなると、米政策金利=FFレートは0.5%以下に低下します。つまり政策金利はいよいよ限りなくゼロに近づいてしまうのです。

 金融政策の基本は金利の変更です。その金利がゼロに近づくと、金利操作以外の政策が必要になります。それを非伝統的政策といった具合に呼びますが、それにはFRBが直接国債を購入することで資金供給することや、低金利の長期化にコミットすることで長期金利の上昇を回避し、低位安定を誘導する時間軸効果などがあります。

 このように、非伝統的政策は長期金利低下見通しにつながりやすいものです。このため、今回のFOMCでの非伝統的政策を織り込む形で長期金利低下が広がってきたわけです。ただ、それはわかるとして、一方で先に見てきたように、米長期金利は過去の実績からすると空前の下がり過ぎになっている。

 果たして、FOMCの結果を受けて、この米長期金利下がり過ぎはさらに継続、拡大となるのでしょうか。それとも、「バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクト」(噂で買って事実で売る)となるのでしょうか。つまり、非伝統的政策を織り込む形で買われてきた米国債は、それが採用されたことを確認して売られるということになるのでしょうか。

(※ザイFX!編集部注:長期金利の代表は10年物国債の利回りです。また、国債などの債券は買われれば買われるほど価格が上昇し、その分、利回りは低下します。「米国債が買われて価格上昇」=「米長期金利低下」という関係になります)

「運命のFOMC」の結果やいかに?
米長期金利が握っているドル/円の行方

 空前の下がり過ぎとなっていた米金利が、FOMCをきっかけに修正が一気に入って急反騰となったのは2003年6月のFOMCの時でした。当時はグローバル・デフレに陥りかねない、日本だけでなく世界的にデフレに陥りかねないといった見方が広がり、その中で米長期金利は3%割れ近くまで急低下していたのです。

 そして、そんな米長期金利低下は、6月FOMC終了後に急反騰に転じたのです。さて、今回のFOMCは、そんな2003年6月FOMCの再現となるのでしょうか? それとも?

 いずれにしても、その結果はドル/円に影響しそうです。これまでも紹介してきたように、ドル(対円相場)は、過去2年以上、米長期金利と高い相関関係を続けてきました。その意味では、ドル/円は米長期金利次第と言えるからです(「なぜ『最悪の雇用統計』でも円安になったのか?」などを参照)。

 さて、FOMCがどんな結果になろうとも、すでに下がり過ぎの米長期金利は、低下の目先的な限界を確認して急反騰に転じるのでしょうか。そうすると、ドルも急反騰に転じる可能性が出てきます。それとも100年に一度の混乱の中で、空前の下がり過ぎはまだ継続、拡大となるのでしょうか。そうであれば、ドル安・円高継続となるわけですが。

 私は、基本的には前者の可能性が高いと思っています。しかし、少し気になるのは、金融危機の中では債券上昇、金利低下は行き過ぎが拡大しやすい、換言すれば「債券バブル」が起こりやすいということです。

記事の続きを読む