親との表面的な絆
岸見 興味深いのは、「社会に適応するのがつらい」と僕のところにカウンセリングに来る若者ほど、親にはすりよっているケースが多いということです。自分の意思を曲げてでも親を傷つけたくないという優しさがある、というか。
原田 アンケート調査上は、若者と親との仲は昔より良くなってきているんですよ。「友達親子」なんて言葉がマーケティング業界に登場して、もう10年くらい経ちますが、マイルドヤンキーの家庭もそれに該当することが多いです。昔のヤンキーみたいに、親に反抗して家を出て行くようなケースは減っているようですよ。ただ、どこまで心を許していて、どこまで本当に仲が良いかは疑問ですね。
岸見 親の顔色をうかがっている、ということもあるでしょうし。
原田 最近の若者、特にマイルドヤンキーはお金がないので、結婚しても親と同居することになりますから、親とは仲良くしておいたほうがいいという打算も働いているんじゃないでしょうか。僕なんかからすると、同居なんて絶対イヤですけど(笑)。彼らに聞いてみると、「全然いいっすよ」って。
岸見 マイルドヤンキーではない大学生と親との関係は、どうなんですか?
原田 恋愛相談は友達じゃなくて親にするそうです。友達に相談するとSNSですぐ広まっちゃうけど、親はSNSを使っていないから安心だって(笑)。昔とは、親友との関係性と親との関係性が逆転しちゃっています。彼とエッチしちゃったことを、友達ではなく親に言う女子もいますし。親もそれが許容できるような世代になってきたんですね。
岸見 しかも今の親は、頭ごなしに叱りつけたり押さえつけたりしませんね。
原田 特にバブル世代や新人類世代の親は子どもに優しいです。自由にやれという気風が強い。ただ一方で、昔みたいに子どもが親に本音をぶつけて衝突したり、わがままを言ったり……というのは減りつつありますね。子どもが親の前でもいい子ちゃんを演じた結果として、良好な関係が保たれている家庭が非常に多いですよ。
岸見 若者たちは、家の中でも外でも神経を使っていることになりますね。空気を読んでいる。
原田 はい。家の中でも外でも「嫌われる勇気」を持てずに生きている。じゃあ一体どこで本音を吐き出すんだろう、って思いますよ。