インスタント・メッセンジャー発祥の地
ライン(Line)やワッツアップ(WhatsApp)(前回もふれたが、同社はフェイスブック社に買収されている)など、日々我々が使うインスタント・メッセンジャーの元祖はイスラエル生まれのアイ・シー・キュー(ICQ)ということを、読者の皆さんはご存知だろうか。
1996年11月、ヤニ・ゴールドフィンガー(Yair Goldfinger)氏、ヨシ・バルディ(Yossi Vardi)氏、その子どものアーク・バルディ(Arik Vardi)氏ら5人のイスラエル人によって設立されたミラビリス(Mirabilis)社によって開発されたのが、インスタント・メッセンジャーの元祖アイ・シー・キューである(アイ・シー・キューは、1998年AOL社に407億ドルで買収され、2014年4月現在、ロシアのMail.Ru グループが保持)。
ヤニ・ゴールドフィンガー(Yair Goldfinger)氏は、この売却で得たお金で投資家サイドに回り、イスラエルのハイテクスタートアップへ投資。現在もなお、イスラエルのハイテク・スタートアップのエコシステムを支えている。同氏の投資先としては、Dotomi社、PicScout社、Jajah社などがある。
ヨシ・バルディ(Yossi Vardi)氏は、読者の皆さんには馴染みは薄いかもしれないが、Joiの愛称で知られるMITメディアラボ所長の伊藤譲一氏(JOI ITO ブログ:イスラエルへの2度目の旅を振り返ってより)を初めてイスラエルに招いたのが、バルディ氏と知れば、少しは関心を持ってもらえるだろうか。バルディ氏は、イスラエルのハイテク業界を投資家として長年支えており、これまで60社以上に投資している。
グローバル企業のR&D拠点がイスラエルに群雄割拠
日本でよく聞かれる「なぜ、イスラエルなのか?」に答える意味もあり、イスラエルが得意とする「ゼロ」から「イチ」を作り上げた企業をいくつか見てきた。ただ、歴史的に見れば日本生まれの発明も多く、「なぜ、イスラエルなのか?」の論拠には、まだ物足りないのではないだろうか。そこで、もう一つの特徴であるグローバルなテクノロジー企業のR&D拠点が群雄割拠していることが、イスラエルにもたらしている影響について解説する。