初めてわかった新設事業所の付加価値
『経済センサス』の興味深いデータ

 日本経済が成長するためには、産業保護を維持するだけでは駄目だ。やはり、新規事業を興し、投資拡大を推進しなければ、経済成長という伸び代を引っ張ることにはならない。

 先日、興味深いデータが発表された。総務省『経済センサス』(2012年)である。ここでは、2009年7月~2012年2月までに新設された事業所が、2011年中に生み出した付加価値が10.0兆円だったことが明らかになっている。事業所の付加価値の創出状況がわかるのは、初めてだ。

 2011年の名目GDPが471.3兆円だったことを考えると、新しく設置された事業所が生み出した10.0兆円の付加価値は、対名目GDPで2.4%の成長寄与だったことになる。

 事業所数の変化に注目すると、2009~2012年の約2.5年に新設された事業所数は28.7万先(事業内容不詳を含めば44.3万先)であり、全事業所の5.3%になる。計算上、1年間に14社に1社が廃業する代わりに、47社に1社が生まれている計算だ。わが国の企業の顔触れは一定期間で入れ替わっていて、新陳代謝もある程度は進んでいる。

 次に、このデータを使って、1998年以降、新設事業所がどのくらいの付加価値を生み出してきたかを計算してみた(図表1参照)。過去、新設事業所がどのくらいマクロの経済成長を引っ張ってきた可能性があるかを示すものである。グラフを見て気がつくのは、両者の奇妙な対応である。名目GDPの成長率が高くなるときは、新設事業所が生み出した付加価値が大きくなっていた。

事業所の増加が名目GDPを押し上げていた?<br />“新陳代謝”こそが日本経済成長のエネルギー<br />――熊野英生・第一生命経済研究所<br />経済調査部 首席エコノミスト
(注)1先当たりの新設事業所の付加価値創出額は、2012年『経済センサス』しかないので、過去も1事業所の付加価値創出額が同じだったと仮定した。