「お客様、恐れ入りますが、私一人では判断できません。大切なことですから、しっかり協議してお返事いたします」
「だめだ。俺は忙しいんだ。こんなことにいつまでもかまっていられるか!」
「お急ぎかもしれませんが、いますぐというわけにはいきません。どうか、協議する時間をください」

 篠山は丁寧な口調だが、きっぱりと言い切る。

「協議した結果をお知らせいたしますので、ご連絡先を教えていただけますか?」

悪質なクレームには「ギブアップ」してみせる

 一昔前には考えられなかったクレーマーが、巷にあふれ返っています。相手の些細なミスをあげつらって、法外な要求をする消費者はその代表でしょう。

 この事例では、店側に落ち度はないと推測できますが、それでも確固たる証拠があるわけではありません。そこに、「保健所に駆け込む」などと言って恫喝されれば、店側は対応に苦慮します。

 こうしたクレーマーに対しては、まず「即答できない」ということを繰り返し伝えることが効果的です。私は、この話術を「ギブアップトーク」と名付けています。

 以下が私がお勧めするギブアップトークの三大必勝フレーズです。

1. 「お急ぎかもしれませんが、いますぐというわけにはいきません」
2. 「大切なことですから、しっかり協議してお返事いたします」
3. 「私一人では判断できません」

 店長の「作戦」は、まさにこれです。「私一人では判断できない」と言って、ギブアップして見せているのです。