「おたくも停止するのか!」──。

 全国各地の金融機関に激震が走っている。これまで銀行などの窓口で大量に販売されてきた変額年金保険の新規販売を、相次いで停止、縮小する動きが保険会社のあいだに広がっているからだ。

 なかでも衝撃が大きかったのは、5月1日のハートフォード生命保険の新規販売停止だった。

 2000年に日本で開業した同社は、保有契約件数55万5000件、総資産3兆2670億円に達する変額年金保険のリーディングカンパニー。それが新規販売の停止だけでなく、規模を大幅に縮小して、既契約の維持管理会社になるというのだから、衝撃が大きいのも無理はない。

 そしてハートフォードの発表から1週間後、他社の販売停止などもあって、顧客が殺到していた住友生命保険も「苦渋の決断」(岩井豊城・代理店事業部次長)を下して一部商品の販売停止に踏み切った。その数日後には、アイエヌジー生命保険も新規販売停止を発表するなど、上位陣が続々と新規販売停止に追い込まれている。

 理由は明白だ。金融危機により、変額年金保険の抱えるリスクを支え切れなくなってきたためだ。

 変額年金保険は、投資信託と保険がセットになった商品で、運用益が狙えるうえ、運用が不調でも払い込んだ元金が保証される「元本保証型」が主流となっている。リスクを嫌う顧客と一気に数十万円の手数料を稼げる銀行の利害が一致して爆発的に売れた。それがさらなる開発競争を呼び込み、付加価値の高い商品が相次いで投入されてきた。

 だが、契約者にとってのメリットは保険会社のデメリットになる。

 住友生命では、最低保証のために基礎利益の半分以上の1638億円の積み立てが必要で、前期決算では利益が半減する見込みだ。

 また、損失を補填してくれる再保険を使ってリスクヘッジしている保険会社では、「運用環境の急激な悪化により、今年に入って再保険料が3~5倍に跳ね上がった」(関係者)という。このため、銀行の意に反し、販売停止せざるをえない状況になったのだ。

 各社共に他の保険商品の銀行窓販をやめるわけではないが、これまで売りやすい変額年金保険に傾倒してきたツケは大きい。死亡、医療保険などの保障性商品が銀行窓販の柱となるにはまだ時間がかかる。銀行窓販戦略は大きな曲がり角を迎えた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)