「中国・ロシア同盟」が米国を滅ぼした日

 それは、「仮想敵No.2中国と組むこと」だった。ロシアの仮想敵No.1は、もちろん米国だ。では、なぜ中国は「仮想敵No.2」なのか?「中国はロシア極東を奪おうとしているのでないか?」というのが、すべてのロシア政治家の懸念なのだ。

 なぜか?ロシア極東地域の人口は、わずか700万人。一方、ロシアと国境を接する中国東北三省には、なんと1億2500万人が住んでいる。そして、中国人はどんどんロシア極東に移住して「実効支配」を進めている。プーチンは、この動きの背後に「北京政府の意志」を感じとっていた。

 とはいえ、米国に旧ソ連勢力圏を荒らされていた05年の時点で、「背は腹に変えられない」状況。そしてロシアは、中国に接近する。次期覇権国家を狙う中国も、ロシアの動きを歓迎した。それに、中国はロシアの「最新兵器」と「石油・ガス」も欲しい。両国は、40年以上続いていた「領土問題」を解決し、国境を画定。05年8月には、初めて「中ロ合同軍事演習」が実施された。

 さらに中ロは、中央アジアの旧ソ連諸国を、「上海協力機構」(SCO)を強化することで取り込んだ。また、05年7月のSCO首脳会談では、インド、パキスタン、イランが「オブザーバー」として承認され、同組織は世界の一大勢力に変貌していく。SCOは、その後「合同軍事演習」を実施するなど、「NATOに対抗する組織」としての性格も強めていった。

 そして06年5月10日、プーチンは米国に「原爆級」の爆弾を落とす。なんと、「ドルではなく、ルーブルで石油を売る!」と宣言したのだ。曰く「石油などわれわれの輸出品は、世界市場で取引されており、ルーブルで決済されるべきだ」。「ロシア国内に石油、ガス、その他商品の取引所を組織する必要がある」

 なぜ、決済通貨の変更が“爆弾”なのか。実は、米国のパワーの源泉は「世界通貨発行権」を握っていることにある。プーチンは、「もうドルを基軸通貨として認めない。徐々に『駆逐してやる!』」という強い意志を世界に示したのである。

 その後実際、世界で「ドル離れ」の動きが加速していった。06年12月末、「ユーロの紙幣流通量がドルを超えた」ことが発表された。07年12月には、イランが「原油のドル決済を停止する!」と宣言。同年同月、中東産油国がつくる「湾岸協力会議」は、「2010年までに湾岸共通通貨をつくる!」と発表。徐々にドル基軸通貨体制にほころびが出てきた。

 そして、08年9月15日、リーマンショックが起こり、世界は「100年に1度の大不況」に突入していった。日本では、「米国の不動産バブル崩壊」「サブプライム問題顕在化」から続く流れと解説されるこの危機。しかし、裏には別の大きな流れがあった。そう、中ロを中心とする「多極主義」と、「一極支配体制」を守ろうとする米国の、基軸通貨を巡る戦いである。