モンクは、このマイルスの傑作に刺激を受け、改めてピアノ独奏で「ラウンド・ミッドナイト」を録音。それは「セロニアス・ヒムセルフ」(写真)に収録されています。最も優れているのは21分51秒に及ぶボーナストラック「ラウンド・ミッドナイト(イン・プログレス)」。何度もやり直しながら、楽曲を仕上げていく作業がありのままに収められているのです。そこには、ジャズが生まれる瞬間が凝縮しています。

 このピアノ演奏を聴けば、モンクは決して上手く弾くことが目的なのではないことが分かります。勿論、最良のピアニストですが、彼が求めているのは、初めて満足できる音を出した時の無垢な喜びに違いありません。その意味で、モンクはピアニストというよりは作曲家なのでしょう。

モンク没後の“ラウンド・ミッドナイト”
名曲は時代を超えた

 今や、セロニアス・モンクはジャズを革新した真の巨人と目されています。モンク(monk)には僧の意味もあって「ビバップの高僧」などと称されています。

「モンクは、いつだっておかしなことを言っていたし、演奏を中断して歩きまわることもあった…思いつくままに独り言を言い始めたりもした。」とはマイルスの弁です。かなりの奇人・変人だったのでしょう。

 しかし、誰の真似でもなく、誰にも真似の出来ない、モンクならではの音楽を創り続けました。良き理解者がモンクを発見したことがジャズの歴史を大きく前進させたとも言えるでしょう。

 セロニアス・モンクは1982年2月に64歳の生涯を閉じました。

 その4年後、米仏合作映画「ラウンド・ミッドナイト」(ベルトラン・ダヴェルニエ監督)が封切られました。名テナー奏者デクスター・ゴードンが主演、音楽監督はハーヴィー・ハンコック。サウンドトラック盤(写真)にはボビー・マクファーレンの声楽をフィーチャーした“ラウンド・ミッドナイト”が収録されています。

 聴けば、名曲は時代を超え、アレンジを問わない、と再確認できます。

(音楽愛好家・小栗勘太郎)