路傍の花が人知れず美しく咲いていることがあります。
その花は、誰に命じられる訳でもなく、ただただ自然にあるがままに咲いています。
誰もそれに気が付かないまま時が過ぎれば、美しい花が其処に咲いていたという事実も時の谷間に消えていきます。
しかし、もしも誰かが、その花の尋常ならざる美しさに気が付いたとしたら、路傍の名も無き花には、その美しさに相応しい新しい展開が訪れることになります。
と、いうわけで、今週の音盤は、モデスト・ムソルグスキーの「展覧会の絵」(写真)です。
生前は一度も演奏されず
「展覧会の絵」と言えば、ムソルグスキーの代表作です。いや、それに留まらず、幾多の名作・傑作を生み出しているロシア人作曲家の作品の中でも、最高峰に列せられる一品であります。
「展覧会の絵」には、常識や旧来の響きを超える革新性があります。長調と単調の間の境界線が曖昧になってしまう和音の妙があります。西欧的合理性では捉えきれないロシアの土着的響きがあり、狂熱のリズムがあります。