「伝え方」を伝承していく。「伝え方」を学問にする。

「伝え方を伝承するためにも、コピーライティング学を作りたい」<br />【佐々木圭一×小西利行】(後編)小西利行(こにし・としゆき)
コピーライター/クリエイティブ・ディレクター/劇作家/絵本作家 大阪大学卒業後、93年に博報堂に入社。2006年に独立し、現在のPOOL INCを設立。「伝わる言葉」を中心にCM制作から商品開発やブランド開発、企業コンサルティング、都市開発までを手がける。これまでに手がけた広告は、500本を超える。海外の権威ある広告賞である、CLIO、ニューヨークADC、ONE SHOWなど数々の広告賞を受賞。国内でもTCC賞、ACC賞など受賞歴多数。ENJIN 01 文化戦略会議メンバー。http://pool-inc.net/

佐々木 伝え方は学べるものだと僕は確信しています。センスではなくて、誰もが学べるんです。僕は今41歳で、小西さんは45歳ですよね。平均寿命からすると、もう人生を折り返している。残り時間が限られている中で、これからやりたいのは「伝承」なんです。伝え方の技術を次の世代にどう残していけるか。

小西 うんうん。

佐々木 たとえば、日本料理一つとっても、これだけ美味なる食文化が完成してるけど、それは誰かが突然ひらめいてでき上がったものじゃない。筍の煮つけが何でおいしいかというと、出汁の取り方をはじめ、おいしい作り方をたくさんの料理人が脈々と伝承して、今の状態を保っているわけです。だから伝え方も、きっと伝承できる部分があるんです。

小西 今の佐々木君の話、もう強烈に共感するね。僕はコピーライティングっていう学問を作りたい。学問って言うと偉そうだけど、建築も経済学も政治も全部同じ学問ですよね。デザインも学問だし、実際にデザイナーはデザインをメソッドとして学ぶ。そして、実践して世の中に出していきます。でもコピーライティングは、学べる場がないんです。一部そういうことを教えるところもあるらしいんですが、きちんとしたメソッドとしては教えていません。

佐々木 確かにありませんね。

小西 だけど、たとえばデザイナーはここ10〜15年で、一般化したし地位も上がった。デザイナーが設計するマンションは、デザイナーズマンションって呼ばれて、ちょっとよさげだよね。なんか高そうだし。でも「コピーライターが作るマンション」って、それは何?って意味がわからないでしょう。

佐々木 わかんないですね(笑)。

小西 でもコピーライターは、コンセプトを作る職人なんです。たとえば「森みたいなマンションを作ろう」とコンセプトを掲げることで、デザイナーも建築家もイメージを考え始めます。つまり源流を作るのは、言葉なんです。コミュニケーションを円滑にするのは、佐々木君が言ったみたいに、センスじゃなくて技術。それを企業経営者はもちろん、広報や企画開発者に教えられたら、日本のビジネスは大きく変わるだろうと思います。
 この伝わり方、言葉のあり方を体系立てて、形として残せば、世の中に広がっていきます。アイディア次第では、コピーライティング学が生まれてくるんじゃないかなと願っています。