「クレーム」というと、一般に営業マンは避けたがります。しかし、クレームも、考え方しだいではチャンスに変えられます。

 特に家やクルマなど長年使うものは、ある意味、クレームが来るのは当然のことです。どんな商品であれ、最も状態がいいのは新品、つまり納品のときです。以後、使うほど劣化していくからです。

 言い方を換えれば、不具合が生じるのは、お客さまが使い込んだ結果であるということです。そう考えれば、クレームをつける人はけっして「うるさいお客」ではありません。むしろ「お得意さま」であるともいえるでしょう。

 さらにいえば、「商品が劣化する」ということは、お客さまにとって使い勝手がよくなっていることでもあります。劣化とは、使ううちに生まれる、使う人の“クセ”とも言えるからです。

 その典型が洋服です。最初に鏡の前で着たときはきちんとしていても、動くうちにだんだん着崩れしていきます。これは着方が悪いというより、服が身体に合ってきたからです。実際、着はじめのときよりも、時間が経ってからのほうが着心地がよくなったりするものです。万年筆にしても、人のものは書きにくく、自分のものは書きやすいでしょう。使っているうちに、持ち主のクセがついてくるからです。

 家ですら、家族の構成によって磨耗する部分は変わってきます。ある家では台所のドアのノブがしょっちゅう外れ、別の家では階段を上り下りする音がギシギシする。家族によって使い方のクセが違うからで、悪くなった部分を直せば、そこがまたその家の“味”になり、愛着の湧く部分にもなるのです。

 営業マンはそこをまず理解することが大切です。それだけでもクレームに対する考え方は大きく違ってくるでしょう。

お客さまの立場を考えれば、
クレームは感謝に変わる

 どんなお客さまも、クレームをつけるときは怒りの表情を見せます。それでも、不具合が出るのは「お客さまになじんできた結果」であることを伝え、きちんと補修すれば、最後は笑顔になるものです。