猛暑が続くなか、百貨店の店頭では、“地サイダー”や“包帯パンツ”など意外なものが売れている。
髙島屋・日本橋店の食品売り場では、“地ビール”ならぬ“地サイダー”フェアが好評。宮崎県産のマンゴー果汁や日向夏果汁を使ったマンゴーサイダーや日向夏サイダー、長崎県の温泉地・島原半島のレモン果汁と水を使った雲仙レモネード、静岡県のわさびラムネなど、全国の地場飲料メーカーによる色とりどりのサイダー17種類をコーナーに並べた。
値段は一本147~351円とやや高めだが、レトロな感覚が中高年を中心に受け、予想よりも2倍近い売れ行きだ。
7月16日からのフェア期間中は1日100~150本と、通常の飲料より3~4割多い販売実績を上げている。8月10日から月末までは場所を変えて販売を継続する。
伊勢丹・新宿店では、男性用下着で包帯地のパンツが好調だ。価格は3500円前後とかなり高価だが、通気性がいいとの評判で、一週間に300~350枚売れている。バイヤーの提案により今年から発売したもので、オリンピックに合わせて、世界各国の国旗の色を組み合わせるなど派手な色使いのものも用意した。
東武百貨店では、Tシャツの機能性肌着が前年比20%増。やはり、2000~2500円と高めだが、新素材を使い吸水性や発汗性に優れていることから人気で、「一枚目を買った人がリピートで2枚目、3枚目を購入することが多い」(東武百貨店)という。
さらに、伊勢丹では2年前から店頭においている肌色の下着もシャツの上から目立たないと好評で、一週間で150枚と前年比2倍の売れ行きを見せている。
男性用の帽子も売れている。西武百貨店・池袋店では、7月は前年比2倍売れた。売れ筋は7000~1万円のもので、平日は20個、週末だと25~30個売れている。特に梅雨明けした7月20日の週は例年の3倍の売れ行きだった。
西武百貨店・池袋店の販売員は「お客さんに理由を聞くと、原油高のため自家用車の利用を控え、徒歩での外出が増えたため、日よけに買っていくという答えが多い」と話す。男性用で売れ行きがいいのは、「女性はすでに帽子やサングラスを持っているが、男性のお客様は今回初めて帽子を買うという人が多い」(西武百貨店の販売員)ことが関係しているようだ。伊勢丹のバイヤーは「節約志向が強くなると、すでに持っているもので間に合わせるようになる。タンス在庫にない、目新しいものが売れる」と話す。
ヒット商品が出る一方で、百貨店全体の売り上げは鈍いままだ。百貨店協会がまとめた6月の東京地区の百貨店の売上高は7・4%減で4ヵ月連続のマイナス。これは、昨年のセールが例年よりも早い6月末に始まったことによる期ズレの影響があるが、逆にそのぶんの恩恵が期待できるはずの7月も振るわない。7月の売上高は伊勢丹2・3%増、三越0・8%減、大丸1・3%減、松坂屋4・6%減、髙島屋3・2%減とマイナスが目立つ。
高額品や婦人服の売れ行き不振が、全体売り上げの足を引っ張っているのだ。猛暑で売れている商品は単価の低いものが多く、特需と呼ぶには程遠い。“にわか慈雨”では売り上げ回復とはいかないようだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 須賀彩子)