二足歩行である限り、免れない腰痛。腰痛に関する複数の調査結果では勤労者の40~50%が腰痛持ちで、40代男性では3カ月以上続く慢性腰痛が多い。
職業病としての腰痛リスクには身体的な負荷以外に「姿勢」がある。以前は腰を無理に曲げたり回したりする姿勢が注目されたが、近年は、長時間同じ姿勢でいるリスク環境が増えてきた。パソコン作業が当たり前の事務職でも2人に1人が「腰痛持ち」なのだ。また、仕事に対する不満や職場の人間関係など心理的なストレスも腰痛リスクになる。どうも二足歩行というより「人間」である以上、腰痛リスクは免れないらしい。
それなら、いかに腰痛を予防するかが課題。ブルガリア・ソフィア大学の研究者らが腰痛の再発を防ぐ運動について報告している。
研究では、600人の腰痛持ちを、(1)体幹を鍛える強化運動群(平均年齢42.5歳)、(2)柔軟体操群(同41.3歳)、(3)強化運動+腹部ブレーシング群(同41.0歳)、(4)柔軟体操+腹部ブレーシング群(同40.6歳)の4グループにわけ、10年間追跡。調査開始時点と10年後に、痛みの程度や持続期間、運動した回数などについて質問している。
その結果、腰の痛みの強さや頻度は、全グループで初年度より2年目に改善したが、2年目よりも最終年は悪化していた。また、強化運動群と柔軟体操群では差はなく、腹部ブレーシングを追加した2グループは、より結果が良好だった。研究者は「運動の種類や強さよりも、回数が重要であり、腹部ブレーシングで運動の効果を高めることができる」とし、腹部ブレーシングの成果を「筋肉の腰ベルト」と表現している。
腹部ブレーシングは脊椎リハビリにも使われる方法で、おなか周り(前、後ろ、横)に力を入れて引き締め、安定させるエクササイズのこと。おなかを凹ませる「ドローイン」は、仰向けでないと正しい姿勢のキープが難しいが、ブレーシングは立位や座位で、思い付いたらすぐにできる点が魅力だ。
腹に力を入れ、天然の「腰ベルト」を日々養っておけば、イザという時に腹をくくれる、かも。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)