株価の急落が企業年金にダメージを与えている。10月25日の「日本経済新聞」夕刊の記事によると、日経平均が8000円、ドル円の為替レートが98円で2009年3月末を迎えた場合、企業年金の運用利回りはマイナス約20%になるという試算があるという。筆者がこの原稿を書いている時点では、株価、為替レート共にこの想定よりも厳しい(株安・円高だ)から、この試算は十分に現実的なものだ。
日本の会計基準では、年金資産と引当金の合計額が年金債務を下回ると、その差額を数年に分けて費用計上しなければならないことになっている。
だが費用認識を「数年に分ける」のは単なる会計ルールにすぎず、株主や投資家一般は、企業の株主価値は年金資産が減価すると同時に減少したと認識するし、それが「実態」だ。
現在のような状況では、企業年金基金の資産が1兆円前後になる大企業の場合(日経の記事ではパナソニックの企業年金の資産は1兆1000億円)、2000億円もの株主価値のマイナス要因がその運用から生じるということだ。
こうした場合、母体企業の社長は、企業年金の責任者に対して「なんとかしろ!」と怒鳴ったり、「頑張れ」とムダなことを言ったりするだろうが、はたしてこのままでいいのか。
はっきり言うと、企業が、本業でもなんでもない年金資産の運用でリスクを取り、場合によっては大きな事業部の損益以上の損得を発生させることは、とても「まとも」だとは思えない。
パナソニックは優れた電気製品メーカーで十分なのであって、1兆円を超える資金を運用する投資顧問会社である必要はない。