コンサルに組織変革のデザインを依頼すること、
それはすなわち社内の軋轢との戦いだ

吉岡 ただ気をつけなければならないのは、コンサルタントに動いてもらうにあたって、社員の皆さんにその意味や目的を事前にしっかりと説明しておくこと。そうでないと、いざコンサルタントが各社員にインタビューをしようとしても抵抗されてしまいます。やはり「余計なことをするな」とか、「お金ばっかり高くて、どうせ役に立たないんでしょ?」とか、そんな風に考えている人は一定の割合でいるものです。そういう人たちに面倒がられて適当な受け答えをされてしまうと、時間もお金もムダになってしまいかねない。どこの会社でもそうでしょうが、コンサルティング・ファームに組織の変革の立案をお願いするということは、社内の軋轢との戦いだと言えるかもしれません。

並木 私も経験があります。「上司に言われたから1時間確保したけど、何ですか?」ってとりつくしまもない。そういう対応をされてしまうと、コンサルタントとしても良い成果が出しにくくなってしまう……。

吉岡 私の周りでは、もともとコンサルティングを利用するという文化があまりありませんでしたから、なおさら社員に慣れてもらうまでが大変でした。特に強い成功体験を持っている人ほど、なかなか耳を貸してくれないんです。

「好調なときから外の知恵を活用して自己変革を起こしていく風土が必要」(吉岡さん)

 一般論ではありますが、企業が成長している時というのはコンサルティング・ファームと付き合うことはあまりないですよね。利益が出ているのにわざわざコンサルタントを雇おうという発想にならないし、仕事が忙しくてコンサルタントの相手をしている暇もない。成長に陰りが見えたり、先行きが見えなくなってきた時に初めて、誰かの知恵を借りたいと思い始めるものです。困るまでは自分でやる。困ったら人に助けを求める。これは日本の企業の特徴と言えるのではないでしょうか。

 欧米の企業のように、好調な時から外の知恵を積極的に活用して自己変革を起していく風土ができてこないと、変化が激しい時代に対応するのがますます難しくなっていくはずです。どうにもならなくなるまでは自分たちだけでやろう、という自前主義はもはや時代遅れになっている気がします。コンサルティング・ファームの知見など、外部の情報を吸収して使いこなしていくにも相当のスキルが必要ですが、そのようなスキルを持っていない企業が多いというのが日本の実情だと思います。

並木 コンサルの活用に対して二の足を踏んでいる日本企業はまだまだ多いですね。

吉岡 せっかくコンサルタントを雇っても、プロジェクトが道半ばで終わってしまうケースも少なくありません。人事異動によって担当者が変わると、必然的に前任者の方向性が見直されることになる。私自身も何度も経験しましたね。コンサルティング・ファームと進めてきたプロジェクトがあと少しで形になるという時に終わってしまって、実にもったいない思いをしました。