「できない」と結論づけることの価値を
コンサルタントは理解してほしい
並木 逆にコンサルティング・ファームの側に注文をつけるとしたら、どんなことを求めたいですか?
吉岡 そうですね……。「課題の解決が望む方向でできない」なら「できない」と早く言ってほしい、ということでしょうか。我々が提示した課題が解決できそうにないのであれば、早く白旗を上げてもらわないとお金ばかりかかってしまいます。でも彼らは「まずはこういう調査をやってみましょう」、それが終わると「もう少し踏み込んでいけば、答えに近づけそうです」と言って、また次のプロジェクトを用意してくる。そして「これにはあと1億円かかりますよ」と言うわけです。まあ、はっきりと「できない」に近いことを言われたことも一度だけあるんですけどね。
並木 その言葉を聞いた時、どうお感じになりましたか?
吉岡 ある事業を立て直すための戦略立案を依頼して、半年くらい経った頃でした。もちろん、その課題に答えを出すことは難しいと自分でも分かっていましたが、コンサルタントの方にはっきりと「極めて難しい」と言われて確信につながった。そう言ってもらえなければ、何とかなるんじゃないか、他に手があるんじゃないかという気持ちをずっと捨て切れなかったはずです。経営をしていく上では、「できない」という情報も非常に重要なんです。
並木 うまくいくこともあれば、失敗することもある。ときには「できない」と言われることもある。コンサルティング・ファームのそういうパフォーマンスに鑑みて、フィーに対する納得性はいかがですか。
吉岡 正直に言って、金額的には高いと思いますよ。グローバルに展開する有名なコンサルティング・ファームは特にそうですし、成功報酬型になっているところもほとんどありません。結果が出るかどうかが分からない段階で大きな金額を決済するのは、経営者としては非常に頭を悩ませるところです。毎回成功するのであれば、決して高くは無いとも言えますが。(笑)
でも、先ほどもお話ししたように、第三者でなければできないことは確かにあります。「自分たちで必死になって考えなければならないこと」と「第三者に依頼すべきこと」をきちんと峻別することが大切だと思います。
そこを間違って、何でもコンサルタントにお願いするようになると、大きな弊害につながる可能性があります。自分で考えることをしなくなり、コンサルタントが作った資料をただコピペするようになってしまうんです。そういうマインドが蔓延すると、企業が自立した形で自らの道を切り開いていく事が出来なくなります。これは、コンサルティングを利用する際の大きなリスクとして認識しておくべきでしょう。