大企業にとってコンサル活用の魅力のひとつは
外部だからこその「しがらみのなさ」

並木 そのコンサルティング・ファームに日本で仕事を依頼した時、スウェーデンで見てきた印象と何か違いを感じましたか?

インタビュアーの並木裕太さん

吉岡 大分違ってましたね。どっちが良い悪いということではなく、おそらく日本で取り組んだテーマが難しかったんだと思います。スウェーデン時代はオペレーションの改革が議論の対象でしたが、その時は商品戦略というテーマで知恵を出し合うことになりました。コンサルタントの方と相談して、とにかくやってみましょうという感じでスタートしたものの、具体的な成果はなかなか出なかった。

 商品戦略のテーマで根本的な問題解決を図るには、結局のところイノベーションが不可欠なんです。でも、コンサルティング・ファームがイノベーションを生み出せるわけではありません。あくまで何らかの“ネタ”があって、それをどう加工するか、どう活用するかを考える時にこそ、彼らの知恵は生きる。この件に関してコンサルティング・ファームが役に立ったかと言えば、残念ながら評価は「×」ですね。

並木 その他のプロジェクトで印象に残っているのはどんなものでしょうか?

吉岡 ある事業の中期経営計画の策定を依頼したプロジェクトは、評価するなら「△」。期待した以上の成果が出たとは言えませんでしたが、社内での各部署や担当者が自分たちの現状認識を正しく行うという意味では有効に機能しました。事業の整理を伴うプロジェクトでは、対象部署の担当者に今のままではダメだということを理解してもらわないと先に進めない。それは社内の人間が頭ごなしに言うよりも、第三者に「世の中の状況を中立的な目で見ると、貴方が思い描くようには行かない可能性が高いですよ。このままでは危ないですよ」と客観的な視点とデータで説明してもらった方が理解を得やすいんです。

並木 なるほど。社内の意見調整、意思統一にコンサルタントがひと役買った、と。

吉岡 そうです。特に大企業の場合、しがらみに縛られないコンサルタントだからこそできることは多いように思います。別のコンサルティング・ファームは情報収集力に非常に長けていて、まさに地べたを這いつくばるように、徹底して細かな情報を集めてくれました。例えば、海外の販売会社が日頃どんな行動をしているかというのは、東京にいてもなかなか分かりませんよね。現地に説明をお願いしても、本人たちも十分な情報を持っていない場合もありますし、良くあることですが、都合の悪いことは報告してこないという風になりがちです。

 そのファームのコンサルタントたちは、自社の販売会社のセールスマンがどれくらいの頻度でカスタマーのところに通っているか、それが競合他社と比べてどれくらい多いか少ないか、他社はカスタマーとの良好な関係づくりのためにどんな工夫をしているか、というところまで情報を拾ってきてくれた。その情報を元に改善計画を作ることが出来たわけです。事実を目の前にすると誰しも納得せざるをえませんので、これは非常に助かりましたね。

並木 競合他社など「外」の情報をかき集めてくるだけではなく、社内の見えない情報に光を当ててくれるということにも高い利用価値を感じたわけですね。

吉岡 大きな組織になると、経営者が一番上に立って見下ろしてみても、実は見えないところがいっぱいあるんです。その見えないところに課題の本質が隠れているという場合も、ままあります。また、担当者レベルになると、自分が関わっていないところで何が起きているのか、もっと見えていない。こういう時は外部のコンサルタントに入ってもらった方が、組織内の情報を大きな視点から効率的に整理出来るわけです。