ウクライナで事態収拾を図り極東開発を志向 <br />中国と急接近するロシアの「本音」とはサハリン国立大学・ミネルビン学長(右) Photo by Masato Kamikubo

 しかし、その重い雰囲気は、調印式が始まるとあっさり壊れた。旅客機の3席分を一人で占拠できるような巨体のミネルビン学長が話し始めた途端、我々は笑いを抑えることができなくなったからだ。まず、ロシア側の通訳を務めた、まるで昔の米国のコメディアンのような、少し禿げ上がった頭と分厚い黒縁メガネの教授の「直訳日本語」がユーモラスだった。

「ソンケイスール、ニホンカーラキタミナサマガタ。ソンケイスール、ニホンノキョウトカラキタ、リツメイカンノミナサマガータ。キョウハ、スバラッシイ、デキゴトノアル、イチニチニナルトオモイマス」

 という調子で、学長が話すロシア語の単語1つ1つを直訳しているのがわかるのだが、それがユーモラスで、皆、笑ってしまった。また、超巨体を揺らし、汗だくで語る学長と、それを直訳する教授の掛け合い自体が抱腹絶倒であった。まるで昔の「藤村有弘」のでたらめ外国語の芸を見るようであった。学長と教授は2人「M1」に出場すれば、優勝できるかもしれない。

 一方で、通訳の教授は、単語の直訳ではあるが、その内容は実に正確。1つの言葉も詰まることなく、まったくよどみなく即座に訳していくのには驚かされた。相当な語学力の高さを感じさせられたからだ。

 大学間協定の調印が無事終わり、夕食会となった。大学の食堂に移動し、調印式と同じように並んで座ったが、サハリン国立大側の教授陣の威風堂々たる雰囲気は、一変した。とにかく、何度も何度もウォッカで乾杯を繰り返すのである。学長が「今日、尊敬する日本から来た皆様方とお酒を飲んで家に帰ることを、妻が怒らないように。。。」と乾杯する。他の教授も次々と「尊敬する日本から来た皆様方が、家族に愛されますように」「まず、政府の間は置いておいて、われわれ民間人が仲良くしましょう」と乾杯する。果ては、学長自ら、巨体を揺らしてロシア民謡を朗々と唄ってしまった。

 とにかく、サハリン国立大の教授陣からは、おとなしくて反応の鈍い、シャイな日本からの客人たちをなんとか楽しませようとしているのがわかった。日本の「お・も・て・な・し」のような、細やかな段取りはないが、真心が強く伝わってきた。

 立命館大学とサハリン国立大学の協定締結は、日露関係全体からすれば、極めて小さな話でしかないだろう。しかし、サハリン州には、まさに国際政治の最重要拠点として焦点が当たり始めている。ウクライナ情勢が混迷を深める一方で、極東地域の重要性が相対的に高まってきたからだ。