こうした事情を踏まえて、私たちから先に「100億円」と金額を提示することにした。

 それに対して、相手は「それでは高すぎる。会社の適正価値から考えればもっと安くていいはずだ」と言ってきた。そこで私はこう反論した。

「先ほど、まだきちんと検討できていないから買収額は出せない、と言いましたよね。それなら、会社の適正価値はわからないはずでは?」

 発言の矛盾をつかれた相手はそれ以上反論できなくなり、「じつは60億円までなら出せると考えています」とカウンターオファーをしてきた。相手の発言を逆手にとることで、交渉を有利にスタートできたのだ。

 オープニングオファーは相手にしてもらうのがベスト。しかしそこにこだわり続けると、交渉の入り口でつまずきかねない。臨機応変に対応できるよう、自分から先にオファーするという選択肢も持っておこう。

 オープニングオファーをすることは、悪いことばかりではない。交渉のスタートポイントをこちらが設定できるというメリットもあるのだ。

オープニングオファーは相手に促せ

 


◆書籍編集部からのお知らせ

オープニングオファーは相手に促せ

『交渉で負けない絶対セオリー&
パワーフレーズ 70』

大橋弘昌【著】

ニューヨークで百戦錬磨の日本人弁護士が、序盤戦からクロージングまで、交渉ですぐ使える実践ノウハウを一挙紹介。
「『ノー』と言わずに『イエス・イフ』と答えよ」「相手の主張に賛成しながら有利な方向へ話を導け」「壁にぶつかったら『半分ずつ負担しよう』と言え」など、交渉・商談・営業・社内の利害調整などで相手と「ウィン・ウィン」の関係を築く方法を解説する。

2014年7月4日発売、本体1400円+税、四六判ソフトカバー
ISBN 978-4-478-024768

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