週刊ダイヤモンドのライバルというべき「PRESIDENT」(2009年11月2日号)の手帳特集を見て驚いた。手帳の実物を公開する記事の中で、あるメガバンクの支店の個人営業課で「フィナンシャルコンサルタント」を務める若手行員の手帳が公開されていた。彼女は個人客(記事によると「60代以上の富裕層が主」)に対して資産運用の情報と相談を提供している。

 手帳の実物写真には、個人名や会社名などにボカシが入っていて顧客の名前などはわからないようになっているが、手帳を通じて銀行員の仕事ぶりがわかる。

 手帳は、左頁がスケジュール欄で右頁が自由書き込み欄のビジネス手帳によくあるタイプだが、これが仕事にフル活用されている。

 スケジュール欄にはコンタクトを取るべき顧客の名前が顧客番号とともに載っている。外出先からこの番号を支店に照会すると顧客情報が瞬時にわかるという。銀行の場合、顧客の資産の大部分を預かっていることが多いので効果的なセールスができるはずだ。

 手帳の土日の欄には、本部からの運用情報のほかに退職金など大口の振り込み情報が記入されている。「入金のお礼を言った後、すぐ運用方法を提案することで成約に結び付くことも多い」という。大口入金を真っ先に知ることができるのは銀行の強みであり、顧客側で十分な準備・検討ができていない時点で有利なセールスができる。形式上「お礼」から入ることができるのもセールスには効果的だ。

 たとえば退職金について、顧客の側では、おおまかな運用計画を立てて、個々の商品については、最も有利な商品を、最も有利な購入窓口で買わなければならないのだが、こうした検討の結論を得る前に銀行の相談係からアプローチを受けると、話に引き入れられて、その銀行で取引するのが当然のような気分になるだろう。