また、一般に行われているOJTは、多くの場合、現場の先輩や上司などをOJT指導者として行われるため、OJT指導者によって教育、学習効果の質に差ができてしまう、OJT指導者の持つ能力以上のことを学べない、といった弱点があります。現場によっては教えるのが下手な先輩や上司もいて、どのOJT指導者に当たるかは運次第、ということはよくあることです。

 その上、多くの場合、日々の仕事は単調なもの。「仕事を通して学ぶ」といっても、いつ、学びが得られる「教育的瞬間」が訪れるのかは、予知不可能で、それまでは「単なる労働」の日々が続くことになります。そして、OJTの最大の弱点は、現場で行われているOJTに直接介入することができず、教育の質を担保することが難しい、という点です。

 その点、研修であれば、人材開発担当者が直接介入することができるため、品質管理を行うことも、評価することも可能です。社員全員が同じように知っておいてほしい内容であれば、OJTよりも集合研修の場で伝える方が確実で、効率的でしょう。

 こう考えてみると、人事や経営側が直接介入できる研修と、間接的に介入する形となる現場でのOJTを単純比較することはあまり意味がない、ということがおわかりいただけるかと思います。

「研修はなんのためにやるのか?」研修は、「組織の戦略を達成する」「組織・事業を存続させる」つまり「企業の経営活動に資する」ため、企業の人材育成上の課題を効果的に解決する一手段として行うものです。自社にとって何が必要かをしっかりと見定めて、人材育成のあり方、研修のあり方を考えていくことが大切です。

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