ハーバード、マッキンゼー、INSEAD(欧州経営大学院)、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)と、日本・アメリカ・ヨーロッパとわたり歩いてきた京都大学教授の河合江理子氏。そして、東京銀行、オックスフォード大学、マッキンゼーと、同じく国際的なキャリアを歩んできた早稲田大学大学院教授の川本裕子氏。日本を知り、世界を知る2人が語る、これから必要とされる人材とは。河合氏と川本氏による対談は全3回を予定。

海外生活で見えてきた海外OJTとの違い

河合 簡単に、私たちが出会ったきっかけをお話ししたほうがいいですね。川本裕子さんとは、東京教育大学附属高等学校(現筑波大学附属高等学校)の同級生です。小・中学から入学する人と高校から入学する人がいて、2人とも高校から入学しています。女性が少なかったこともあって、それからの付き合いになりますね。

 高校を卒業してからは、私はアメリカのハーバード大学に進学して、裕子さんは東京大学を卒業して東京銀行(当時)に入って、2年目のときに日本で結婚。その後、ご主人の都合でイギリスに行かれて、私も当時ロンドンの銀行で働いていたから、ロンドンで再会しました。

特別対談<br />スペシャリストか、それともジェネラリストか<br />日本と海外で見た人材育成制度の違い<br />【早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授・川本裕子×京都大学国際高等教育院教授・河合江理子】川本裕子(かわもと・ゆうこ)
[早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]
東京大学文学部社会心理学科卒業。英オックスフォード大学大学院経済学修士修了。東京銀行を経て、1988年マッキンゼー東京支社入社。パリ勤務を経て、2001年シニアエクスパート。2004年から現職。三菱UFJフィナンシャルグループ及び日本取引所社外取締役、東京海上ホールディング社外監査役、トムソンロイタートラスティディレクターを兼務。これまでに金融審議会委員、道路公団民営化推進委員会委員、金融庁顧問、総務省参与(年金記録問題検証委員会委員)、行政刷新会議事業仕分けメンバー、内閣官房宇宙開発戦略専門調査会委員、統計委員会委員などの政府委員やヤマハ発動機、マネックスグループの社外取締役を務めてきた。
著書に『銀行収益革命』(東洋経済新報社)、『金融サービスのイノベーションと倫理』(共著、中央経済社)、『親子読書のすすめ』(日経BP社)など。

川本 主人がオックスフォード大学に留学することになり、私も東京銀行を辞めて、一緒にオックスフォード大学に行くことを選びました。

河合 よく会っていましたね。

川本 私たちと同世代の女性でいま活躍している人のなかには、ご主人の転勤、あるいは留学になると付いて行き、学位を取ったり転職したりという人が多いと思います。その後、私は東京のマッキンゼーで働いていたのですが、1995年に主人がOECD(経済協力開発機構)に出向になった時は、パリに一緒に行くことにしました。

河合 その頃、私はパリを出て、主人の転勤でポーランドに行くタイミングでした。1995年の10月にポーランドに行っているので、ちょうどすれ違いだったかもしれませんね。

『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい』(ダイヤモンド社)でも書きましたけど、当時のポーランドにはモノがまったくなかったんですね。食べ物が手に入らないという理由で、パリに買い出しに来ていたので、一緒によく食事はしていましたね。

川本 そうでした。私はパリに4年間いました。

河合 1998年に、私はスイスのBIS(国際決済銀行)に行きました。川本さんは2000年に東京に戻って働いているので、メールでは連絡を取りながら、途切れないでつながっているという感じでしたね。

川本 そう、会わなくても途切れない。

河合 海外で働いていると、日本の企業との違いは見えてきます。例えば、人材育成。日本の企業でもOJT(On-the-Job Training)がありますけど、海外の優良企業の場合は、システマチックに教えていると思います。ビジネススクールで教えているような先生、専門家が教えているので、効果が違うと思います。

 日本のOJTにも良さがあると思いますけど、それだけでは伝えきれないこともあると思いますし、新しいことを教えるためには時間もかかります。また、結局、自分の先輩や上司が知っていることに限定されてしまいます。

 一流の講師陣から学ぶ機会があって、異なる部門から一緒に参加している人からも勉強できますね。先生からも新しいことを学び、ディスカッションに参加している社内の他の部門の人たちのなかから、仕事についても、組織についても学べました。