「今日の長谷川社長の話に心配事はまったくありません。順風満帆、素晴らしい将来が期待できると私は思っています。もし、それが実行できなかったら、総退陣はあるのですか」。国内製薬最大手である武田薬品工業が6月27日に開催した定時株主総会で、「武田」と名乗る男性はそう問いただした。

武田薬品の株主総会は3時間超で終了した。質疑の打ち切りに怒号が飛ぶ場面もあった
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 総会には昨年を1000人以上上回る4000人超が出席した。「いろいろ騒がれ、何事かと思い初めて出席した」と30年来の個人株主。出席者たちが特に気にしたのは、創業家の一部とOBが総会に向け事前質問状を送り付けたことだ。

 創業家十数人とOBら計112人の株主が名を連ねた事前質問状は、2兆円以上を投じた海外企業のM&Aの失敗に対する経営責任などを追及し、同社初の外国人社長となるクリストフ・ウェバー氏の就任に反対するものだった。

 長谷川閑史社長は総会当日、約40分をかけて「M&Aは失敗でなく成功」「ウェバーはグローバル企業である現在のタケダをリードする人材として最もふさわしい」といった回答文を読み上げた。回答の全文は同社のホームページに公開されている。

 会場からの質問にも経営陣はよどみなく、武田薬品の将来に対する不安を払拭するよう答弁した。頃合いを見て長谷川社長が質問を打ち切ろうとしたとき、最後に1人、質問を許された。それが冒頭の武田氏である。

 ほとんどの株主は気付かなかったが、彼は武田薬品に勤務経験のある創業家一族の1人だった。