武田は国内最大手であるだけに、外国人社長の起用は業界を揺るがしている
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 武田薬品工業の仰天トップ人事が波紋を広げている。長谷川閑史社長が来年6月に会長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、英国の大手製薬会社、グラクソ・スミスクライン(GSK)からフランス国籍のクリストフ・ウェバー氏(47歳)を社長兼最高執行責任者(COO)として招くというものだ。

 確かに武田は、新興国市場の攻略を意識し、2011年にナイコメッドを買収、外国人を経営幹部として積極採用するなど、「グローバル経営」を標榜している。外国人従業員比率は7割弱に上り、経営幹部会議の定例メンバーは、9人中5人を外国人が占める。

 今回の人事について長谷川社長は「グローバルに競争力のある会社にするには、本当にグローバルスタンダードの人材を持ってこないとできない」と説明する。

外国人社長招聘で混乱

 しかし、多くの関係者が不安をぬぐえないのも事実だ。過去、外国人トップの起用で、意思疎通に問題が生じ、経営が混乱したケースが散見されるからだ。武田でも外国人幹部の多い研究所や花形だった国内営業で士気低下を招くのではないかとの懸念がある。

 政府関係者からも「新型インフルエンザや新たな伝染病対策、バイオテロ対策など製薬業界は国家防衛の観点からも重要。リーダー的存在である武田の経営者が外国人でよいのか」との本音がのぞく。

 もちろん、ウェバー氏の手腕さえ確かならばそうした懸念も吹き飛ばせるはず。長谷川社長は「世界7カ国で仕事をした経験があり、ダイナミックで明るく、人に勇気を与える性格。武田にはふさわしい」と最大級の賛辞を送る。

 GSKではアジアの責任者を務めた後、ワクチン事業会社の社長となっており、第一三共とGSKの合弁会社設立の際には、何度か来日するなど日本やアジアには、それなりに“土地勘”もある。