武田薬品工業の研究不正疑惑の調査結果がまとまった。臨床試験への不適切な関与は認めたが、薬事法で禁じる誇大広告などの疑惑は「シロ」判定。武田に逃げ道を残した。

武田の不適切な関与が明らかになってもなお、長谷川閑史社長は「CASE-Jは医師主導の臨床試験だと思っている」と強弁した Photo by Tomohisa Sato

 CASE-J試験は、ブロプレスの売り上げ最大化を図る目的で武田薬品工業が企画・立案した──。

 6月20日、都内で開催された記者会見。武田の高血圧症薬「ブロプレス」(一般名・カンデサルタン)に関する臨床試験「CASE-J」をめぐる不正疑惑の調査結果について冒頭の通り説明する弁護士に、長谷川閑史社長は時折横目でにらむような視線を送った。

 内心、穏やかではなかっただろう。ほんの3カ月前の記者会見で、武田はCASE-Jの内容には関与しておらず、「利益相反の問題はない」とたんかを切ったからだ。武田が依頼した法律事務所の調査で判明したのはCASE-Jの「企画段階から学会発表まで一貫して」武田が関与したという事実だった。

 1999年6月、武田はブロプレスを発売。市場には競合品があふれ、米ファイザーの「アムロジピン」が最大のシェアを誇っていた。当時の武田には、ブロプレスの付加価値と売り上げを最大化するために、競合品と差別化するデータを構築することが課題だった。

 同年9月、ブロプレスとアムロジピンを比較する臨床試験の企画が武田の本部長会で承認された。この瞬間、「ブロプレスの販売促進の目的のために企画した」(報告書)CASE-Jが始動した。

 業務内容や寄付金提供の条件などは試験を取り仕切る京都大学EBMセンターのセンター長と折衝を重ね、2000年10月、京大に30億円寄付することを取締役会で承認した。長谷川社長も当時、取締役として名を連ねているが、会見で追及されると「詳細は記憶していない」とはぐらかした。