2009年7月31日に発表された6月の完全失業率(季節調整値)は5.4%となり、前月に比べ0.2ポイント上昇した。失業率が今後も上昇するのは不可避である。
では、どこまで上昇するのだろうか? これに関して重要な手がかりを与える分析が『平成21年度財政経済白書』の第1章第3節の3「リスク要因」で示された。
それによれば、企業内の潜在的な失業者は経済全体で528~607万人に達する。製造業では328~369万人である。白書はこれを「雇用保蔵」と呼んでいるが、実態的には、企業の過剰雇用者、すなわち企業内の失業者だと考えることができる。
白書は、「雇用保蔵」を、「最適な雇用者数と実際の常用雇用者数との差」と定義している。「最適な雇用者数」とは、「適正な労働生産性を平均的な労働時間で達成できる労働者数」である。2005年から2007年頃まで、雇用保蔵はほぼゼロであったが、リーマンショック以降の急速な生産活動の縮小に伴って急増した。
【図表1】雇用保蔵の推計 |
出典:「平成21年度 年次経済財政報告書」 |
過去の雇用保蔵の推移を見ると、製造業については1993年頃に300万人弱でピークとなっており、全産業では、95年と99年頃に300~400万人でピークとなっている。こうした数字と比べても、最近の雇用保蔵が異常に高いことがわかる(【図表1】参照)。
現在、雇用調整助成金の需給申請者数は、240万人程度となっている。これは、企業が実際に過剰と認定し、休職扱いにしている労働者数だ。白書の推計は、その2.5倍程度の労働者が企業内で過剰になっていることを示しているのである。
全産業の雇用保蔵607万人は、労働力人口(6689万人)の9%程度に相当する。したがって、これらの労働者が実際に失業すれば、日本の失業率は14%程度という未曾有の水準になるわけだ。