「ハロウィーン・ホラー・ナイト」は、ハロウィン期間中にUSJのクルー扮する100体ものゾンビが夜間のパークを徘徊し、ゲストに巨大なお化け屋敷さながらのスリルを味わってもらうという新企画だった。そのヒットにより、例年のハロウィン・イベントの5~6倍となる40万人台の集客を実現したという。
また、子どもに大人気のカプコンのゲーム「モンスターハンター」のイベント化は、「ワンピース」と共に自社以外のブランドと組んで成功したケース。ゲームに登場する20メートル級の等身大大型モンスターを屋外に展示したり、展示室で武器やアイテムをリアルに再現したりして、大きなコストをかけずに子どもたちを取り込んだ。
ゲストに「特別な体験」「世界最高」のイメージを最も強く植え付けたのが、クリスマスシーズンに発表した高さ36メートル、33万個のLEDで飾りつけられた「世界一の光のツリー」。これはギネスブックにも認定され、パークを訪れる冬の恋人たちの目を釘付けにした。
第一段ロケット「ワンダーランド」開業
取りこぼしていたファミリー層をつかめ!

2011年の成功ではずみをつけた森岡氏は、2012年度、「三段ロケット構想」の一段目のロケットと位置付けた新ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を、満を持してオープンする。「小さな子ども連れは楽しめない」というイメージを払拭するため、パーク内に散らばっていた「セサミストリート」「スヌーピー」など幼児向けのアトラクション、ショー、イベントを中心に、28の施設を1ヵ所に集めたものだ。この「囲い込み戦略」は、既存施設とのプラス効果で経営効率を高めるのにも一役買い、大きな結果を出した。
子どもの安全性と目に見える楽しさを重視し、子どもの目線から見える周辺施設のデザインにこだわる、母親が求める「かわいい世界」を実現するために、ライドの色をやわらかく抜けるような明度を持つ中間色に塗装するなど、ゲストの体験価値を高めるために、細部にまで徹底してこだわった。
これまで客層が水準より少なかった3~6歳の子どもを持つファミリー層が、一転してUSJの強みとなったことにより、冒頭で述べたように2012年度の集客数は急増した。第一段ロケットへの点火は成功したのである。
そして、第二段ロケットと位置付ける「ハリポタ」の前哨戦となる2013年度にも、森岡氏はUSJの顔となるアトラクションを生み出している。「ハリポタ」への投資を本格化させるなか、限られた資金で既存のライド・アトラクション「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド」とジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」を、リノベート(再生)したのだ。翌年開業の「ハリポタ」を意識した消費者の“行き控え”が増えるという予想のもと、ファミリー層に加えて女性層の取り込みも意識した。