逃げ足の早さも時には大事
慎重かつ大胆にチャレンジする

――長期戦略のもとで事業に取り組めるようになったのは、2010年に上場廃止して投資家にせっつかれなくなった利点でもあるでしょうか。のれんの償却負担は約120億円以上とかなり大きかったと聞きますが。

 確かに、長い目で事業を考えられるようになった、というのはあります。

 のれんの償却は昨年終わりました。少なくとも吉本興業という会社はいろんな夢を売る企業ですから、挑戦していくマインドだけはなくさないようにしていかないと。そのために、財務体質を強化しておくことは必要です。

 逃げ足が速い、と言われてることも知ってますけど、それも大事なことだと思うんですよね。一度立ち上げた仕事は、それに関わっていた人たちの思い入れや苦労があって、なかなか捨てたり諦めたりできないわけですけど。でも、そこは言葉は矛盾するようですが、慎重かつ積極的に新しいことにチャレンジする精神は持ち続けていってほしいなあと思ってます。

――チャレンジするDNAというのは、事業拡大に伴ってグループ会社が増えたり、経営陣から創業家がいなくなった今後は、どのように受け継いでいかれるのでしょうか。

 答えになってないかもしれませんが、少なくとも数年前と比べて色んなところからビジネスを含めてさまざまなお話をいただくようになりました。ファッションやら音楽やら、そのジャンルは本当に多岐に渡っています。

 吉本興業の根幹でもある大阪は純然たるお笑いの興行会社で今もあり続けている一方、特に東京はそこだけにとどまっていません。こうした現状が吉本の多様化を物語っているし、そんな外部環境に刺激されていればチャレンジせざるを得ませんよね。かつて出版や音楽ビジネスなど個人のツテで他社にお願いしていた機能も、今はグループ内に持ってますし、かなり広い分野で面白い展開ができる可能性を秘めていると思います。

――「吉本興業」という社名から「興業」の字がなくなる日も近いですか?

 いえいえ、そこまでは(笑)。持ち株会社は今の社名でええんと違いますか。


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