バキッ! 容赦なくお仕置きを始めた。パンチ一発であごを割った。倒れたあいつを踏んづけてあばらを折った。化粧箪笥からペーパーウェイトを手に取って、それで顔を殴りつけたら、眼窩が折れた。それから窓へ引きずっていって、下の通りへ投げ捨てようとした。あいつは命乞いをした。
「なんだ、もう泣きを入れるのか、ええ、このくそったれ?」
床に投げ戻した。
「いい度胸じゃないか。俺にこんなふざけたまねをするなんて」と、声を張り上げた。「その服を脱げ。裸になれ」
「勘弁してくれ」あいつは懇願した。
顔を蹴った。
「請求書の支払いをしなかったとき、こうなると思わなかったのか? さあ、服を脱げ」
やつは必死にドアから逃げ出した。すぐに廊下を追いかけたんだが、靴を脱いで靴下だけだったから、やたらと足がすべって、そのあいだに逃げきられちまった。
人工ペニスの効能
スコットランドに着くと、気分が高揚した。試合があるのはグラスゴーで、あそこの歓迎ぶりはすさまじかった。試合の前に少しコカインをやっていたし、マリファナもちょっとやった。コカインはすぐ体から抜けるから問題なかったが、マリファナは体内に残るから、奇策に打って出るしかなかった。人工ペニスに他人のきれいな小便を入れて薬物検査をすり抜けるんだ。ジェフ・ウォルドの助手をしていたスティーヴ・トーマスが旅に同行して、細工してくれた。
試合前日も凧のように舞い上がっていた。キルトを羽織ってメルセデス・ベンツの上から観衆に敬礼。車の屋根で飛び跳ねては、「チャンピオン! チャンピオン!」と叫ぶと、みんなが熱狂した。ドイツ人の男が近づいてきて、これはドイツ車で、すばらしい車なんだと抗議を始めた。
「へえ、たいしたもんだな」と、俺は言った。「つまり、ユダヤ人から奪ったカネで作った車ってわけか? お前が買ったのか?」こんなことは言うべきじゃなかった。人種の話を持ち出すなんて悪趣味もいいとこだ。