あっさり矛を収めた医師会の本心は?
改革を骨抜きにされる可能性も

 だが、問題点を指摘する声も多い。

「審査機関がどのようなメンバーになるかで、新薬や新治療法の受け入れにブレが生じかねない」という指摘は、その通りと言わざるを得ない。厚労省が渋々認めた新制度だけに、実質的に従来とあまり変わらない仕組みになるのではないか。委員を選考するのは、他の審議会・検討会と同様に厚労省の専権事項である。

 次に「医療知識が不十分な患者が積極的に申し出るだろうか」という懸念もある。ただ、難病やがん患者とその家族は、インターネットを駆使して世界中の新薬や最新の治療法を収集しているのが現実。時には医療者を上回る知識を持つことも。従って、「患者が動かない」ことは杞憂に過ぎないだろう。

 最も大きな気懸かりは、日医など反対論を主張し続けた事業者団体の動きだ。「患者申し出療養」が明らかになると、3師会は6月13日に記者会見し「国の審査態勢が維持され、将来の保険適用も目指すとことになり、最低限の条件が担保された」と評価し容認した。当事者団体が矛を収めたことで、すんなり閣議決定されることになった。

 はたして日医の本心はどうなのか。憶測が飛び交っている。

「診療報酬を上げるのが医師会の大きな目標。そのためには政権にすり寄らざるをえない」――。そんな思惑で新制度を認めたが、中身まで全面賛成したわけではなさそうだ。当初の「選択療養制度」にはなかった国主導の審査組織を設けさせて、混合診療の全面解禁を阻止した経緯がある。

 医師会の反対論の根底には「保険外診療が広まると、保険医会員の収入が減りそう」なことにあり、簡単に容認できるはずがない、とも指摘される。

 新制度の実施医療機関を「身近な診療所」まで拡大する原案に対して、医師会内部からは「安全面を考慮して大学病院などに限定すべき」という声が早くも聞かれると言う。政権と歩調を合わせながら本音を忍び込ませ、実質的に「骨抜き」を図るのでは、と見る外野席もある。

 以上の議論を突き詰めていくと、保険適用外の薬や治療法を素早く審査して保険外併用療養制度に組み込むか、保険適用に移行すれば、現行制度でも解決できそうだ。治療の場の拡大も欠かせない。反対派も賛成派もこの点では異存なさそうだ。だが、残念ながら現実はそのように機能していない。だからこそ新しい枠組みが考えねばならない。安全性一辺倒でなく、競争原理を注入することで土台(市場)を揺さぶり、全体の質の向上を競い合う試みがあってもいい。最新の知識や技術を世界中から取り入れつつ、消費者にニーズをすくい上げなければ、どのような分野でも時代に見捨てられる。その努力を怠り、既得権益を守るためだけに国民皆保険の堅持を主張するのは理に適わない。うまくいかなければ組み立て直すなど試行錯誤を繰り返せばよい。

 近々開かれる厚労省の中央社会保険医療協議会(中医協)で実施医療機関の数など制度の詳細を決めていく。新制度の3つの論点がどの程度広がるのを注目したい。また、規制改革会議も7月26日に第2期の初会合を開き、今後、混合診療の対象拡大に取り組む。こうした議論を踏まえて、来年の通常国会に「保険外併用療養費制度」のなかに新たな仕組みとして「患者申し出療養」を創設する法案が提出される見込みだ。