金鉱脈なら、一番分厚いところまで価格を掘り下げる
新市場を一番に発見できたとしても、必ず追従する企業が出てきます。ブルー・オーシャン戦略が「低コスト化」と「差別化」を両立すべきと指摘するのは、量産化や低価格化が得意な二番手以降の企業に、せっかく見つけたおいしい新市場を奪われないための措置なのです。
その上で「市場拡大につながる価格帯」を狙え、としているのは発見した金鉱脈(新市場)の中で、消費者の層が最も厚いところまで価格を下げることで、利益率と販売数量の大きさを兼ね備えた旨みのあるビジネスに育てることを提案しているのです。
ブルー・オーシャン戦略の示すポイントにより、高性能・新技術で新市場をつくりながら、価格が高いことでハイエンド以外に販売が広がらず、やがて新興国による量産品化で市場の最も分厚く儲かるところを簡単に奪われてしまう、最近の日本企業の失敗の理由も説明できるでしょう。
新市場という金鉱脈を見つけたら、コスト削減を早急に行い量産化が得意な二番手を食い止め、販売数の一番多い価格帯を探し当てて販売数量も最大化すべきなのです。
※この記事は、書籍『戦略の教室』の原稿を一部加筆・修正して掲載しています。
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著者紹介
鈴木博毅(すずき・ひろき)
1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、組織論、マーケテイングコンサルタント。MPS Consulting代表。貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略論や企業史を分析し、新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。日本的組織論の名著『失敗の本質』をわかりやすく現代ビジネスマン向けにエッセンス化した『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)は、戦略とイノベーションの構造を新たな切り口で学べる書籍として14万部を超えるベストセラーとなる。その他の著書に『企業変革 入門』『ガンダムが教えてくれたこと』『シャアに学ぶ逆境に克つ仕事術』(すべて日本実業出版社) 、『空気を変えて思いどおりに人を動かす方法』(マガジンハウス社)などがある。