コンサルを辞めていく人とのリレーション
コンサル会社はもっとあってもいいのでは?

並木 事業はそんなに非合理的な世界ですか。

川邊 どう考えても無茶な要求が上司からきたり、まず勘で動いてから理論的な説明ができるように後で肉付けしていくとか、そういう非合理的なことはしょっちゅうですよね。

インタビュアーの並木さん

並木 それにしても、「戦略コンサルは必要ない」というお言葉には非常に考えさせられました。機能をインハウス化しているとはいっても、外からの立場で何か役に立てることはないのだろうか、と。

川邊 必要ないというか、我々が必要とするような知見がコンサルティング・ファームにあるんだろうか、と思いますよね。何百年も歴史があるような重厚長大産業や消費財のメーカーならともかく、ネット業界に関する知識や知恵は集積していないでしょうから、むしろ向こうがネット業界の知見を必死に集めている状況ではないでしょうか。

並木 ネット業界出身の、例えばグーグル出身のコンサルタントが出てくるようになれば話は変わるのかもしれない。

川邊 確かにそうですけど、今は逆ですよね。ヤフー・インク(アメリカ本社)のナンバー2にマッキンゼー出身者がいたこともありますし、コンサルティング・ファームからネット企業に転職する人は多い。そういう人たちがまた戻ってくれば知識も還流することになりますが、現実的には企業の内部に留保されていくのではないかと思います。

並木 でもアメリカでは、アマゾンやグーグルなどは比較的よくコンサルティング・ファームを使っているんですよね。これはどういうことなんだろう……。

川邊 それは欧米ではコンサルが根付いていて、日本では浸透していないという国の企業風土が影響している面が大きいのではないでしょうか。あとヤフー・ジャパンがグローバルなサービスをやっていないことも、我々がコンサルを使わない大きな理由のひとつです。アマゾンやグーグルはグローバルに展開していますから、どうしても人材や知見の面で足りない部分は出てくる。そこは大きな違いだと思います。

並木 あえてお聞きしますが、コンサルティング・ファームに「もっとこうしてくれれば」といったアドバイスはありますか?

川邊 こちらが困っていることを目ざとく見つけて提案をして頂ければ、もちろんそれは聞いてみたい。そのためには、コンサルティング・ファームを辞めて事業会社に転職していく人たちとのリレーションをどう保っていくかが大事なのではないでしょうか。企業が抱えている経営課題を聞き出して具体的な提案に結び付けていく、そういうコミュニケーションはもっとあってもいいような気がします。