コンサルがネット系の事業会社から
「ドラえもんのような価値」を感じてもらうには?

並木 それでは戦略以外の分野ではいかがでしょう。例えば人事などではコンサルティング・ファームを使っていらっしゃいますか?

川邊 どういう人材開発をしていくのか、どういうコーチングをしていくのか、という個別の部分に関してはコンサルティングをよく利用しています。ただこれも根幹の部分、つまり人事評価の根本にある価値基準は自社で作ったものがあって、あくまで枝葉の部分で手助けしてもらうという構図です。

「ディフェンシブな面ではコンサルを活用する意味が大きいのでは」(川邊さん)

 たとえば、爆速経営という理念を約4000人の社員たちに理解して行動を変えてもらうために評価方法にも反映したときも、従来の単なるアクションプランみたいな目標管理から、さっき挙げたヤフーバリュー「課題解決」「爆速」「フォーカス」「ワイルド」という4つを楽しんでいるか、というシンプルな評価軸に変えました。そういった肝心な方針の部分は自分たちで決めています。

 あとはセキュリティ関係にもコンサルティングに入ってもらっています。我々が気づいていないリスクを客観的に指摘してもらうことは重要ですからね。あるいはコスト削減とか、そういうディフェンシブな面ではコンサルティングを活用する意味が大きいのではないでしょうか。

並木 これからも、コンサル出身者を積極的に採用する方針に変わりはありませんか。

川邊 そうですね。先ほども申し上げましたが、事業というのは不合理の世界。コンサルティングの世界でもいろいろ不合理なことはあると思いますが、人と人の相互作用が渦巻く事業会社の不合理さはその比ではないと思います。この世にあるすべての不合理を体験して、ビジネスマンとして成長したければぜひ来て頂きたいですね。

並木 今回の対談を通して頭に浮かんだのは、ドラえもんの姿でした。川邊さんにとってコンサルとは、困った時に必要な道具を出してくれる「四次元ポケット」なのかもしれない。ただ一方で、コンサルタントの立場としては、ドラえもんそのものの存在についても価値を感じてほしいという思いもあるんです。ドラえもんはただ道具を出すだけのロボットではなくて、のび太くんと一緒に歩み、悩み、そして成長していく存在です。

 クライアントをのび太くんにたとえるのは失礼かもしれませんが、ドラえもんとしてのコンサルがいることで、クライアントの成長の仕方も異なるものになると私は思っています。トピック単位で発注することに利用価値を感じているライトなクライアントと、どう深い関係を築いていけばいいのか。そのことを改めて考えさせられました。川邊さん、貴重なお時間をありがとうございました。