24時間営業など利便性の高さから、かつては「開いてて良かった」がキャッチフレーズだったコンビニ。しかし、誕生から40年が経過、消費者ニーズをくみ取る形で進化を果たしている。コンビニの進化を明らかにしていく。

 コンビニの〝顔〟といえば、何といっても弁当やおにぎりに代表される中食だ。少しでもおいしくするため、大手コンビニは日々改良を重ね、商品を進化させている。

 昨年、ファミリーマートの中山勇社長は、店舗で展開している焼きそばを口にして驚いた。

「てこ入れが必要だ」

 そう感じた中山社長がベンダー(製造業者)を尋ねると、ファミリーマートが39%出資していたジョイアス・フーズ(旧朝日食品工業)との答え。

 このままではまずいと考えた中山社長は、製麺に集中させるため、ジョイアスに漬物や大豆などの製造部門を売却させ、その上で同社を100%子会社にした。

 小売業界では「持たざる経営」が基本。だが、目の前の出費より、一刻も早く製麺のクオリティを上げることを優先させたのだ。

 中山社長の危機感は、それぐらい強かった。

「セブン-イレブンは腕立て伏せを100回できるけど、うちは10回しかできない」

 日販でセブン-イレブンに10万円以上差をつけられているファミリーマート。その背景には〝基礎力〟の違いがあり、弁当や麺類といった「中食」にこそ原因があるとみたのだ。

 そこでファミリーマートは中山社長の肝いりで、中食を進化させようと抜本的な見直しに着手。今年3月には社長直轄の組織として「中食構造改革委員会」を新設した。

 これは、商品部を中心にシステムや営業の担当者など約20人を部門横断的に集結させ、商品の開発力の強化や製造・物流拠点の再整備を図る組織だ。

 ファミリーマートの青木実商品本部長補佐は、「ベンダーのてこ入れをすべき商品カテゴリーが分かってきた」と自信を見せる。
 ファミリーマートがここまで中食改革に必死になるのには大きな理由がある。売り上げにおいて最も大きな構成比を占めるのが中食(日配食品、ファストフード)だからだ。

 しかも中食は、「他の商品との併売率が高い」(青木本部長補佐)。

 実はファミリーマートは、2013年度から本格的に「機能数マネジメント」たる独自の手法で品ぞろえの見直しを始めている。

  「砂糖が欲しくて店に来た人が、砂糖がなかったからといって代わりにしょうゆを買って帰らない」(青木本部長補佐)ように、代替の利かない商品を1機能とカウントして品ぞろえを考える手法だ。

 確かに、調味料など、それ自体ではそう多く売れないものもある。それでも品ぞろえに気を使うのは、他の商品の併売(ついで買い)が増え、売り上げ増につながるという結果が12年度の実験段階で出ているから。そしてついで買いの筆頭格が中食だというのである。

王者のセブンーイレブンですら
中食600品目の見直しに着手

「中食はコンビニの顔」

 中山社長のこの一言に象徴されるように、ファミリーマートに限らずとも、中食はコンビニにとって特別な商品群だ。

 コンビニ業界では、常に新しい潮流が注目されがちだ。「金の食パン」が人気を博すセブン-イレブンの「セブンゴールド」や、パッケージにナチュラルローソンのロゴが入ったローソンの健康菓子といったいわゆる高付加価値プライベートブランド(PB)、はたまた薬の取り扱いなどがまさにそれである。

 しかし、コンビニを縁の下の力持ちよろしく支えているのは、中食だ。

 消費者の近くに数多く店を構え、何日分も買い置きできない中食を24時間・365日提供する──。こんなことができているのは小売業の中でもコンビニだけ。しかも、各社オリジナルの味を追求しているだけに、コンビニの差別化を打ち出す、まさに〝顔〟なのである。

 事実、王者セブン-イレブンも、消費増税対策で真っ先に見直しにかかったのは、「今のコンビニに対し、一番ニーズが大きい」(セブン-イレブン幹部)中食だった。

「商品の中身が変わらないのに、3%の増税分を価格に乗せただけでは消費者が納得しない」

 そう考えたセブン-イレブンは、中食の主力商品、約600品目を増税前後の3ヵ月間で全面的に刷新した。