新著『あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?』で「今の日本で新しい成功事例をつくれるのは、もは医療産業しかない」と断言する北原茂実氏。連載の第2回目は、「自分以外の誰かを幸せにしている仕事は、すべて“医療”だと言える」「いかによく生き、いかによく死ぬかを支援する医療こそが本当の経世済民であり経済である」と確信する北原氏の信念が語られます!
21世紀は
「医療の世紀」になる
私が医療改革と社会改革を同列に論じていることに、違和感を抱く人も多いかもしれません。医療が大事なのはわかる。でも、どうして医療改革が社会改革につながるのか。それはお前(北原)が医者だから、そう思ってるだけじゃないのか。世の中にとっては、医療問題よりも経済問題のほうが重要なんだ、といった感想です。
脳外科医、経営者。1953年、神奈川県生まれ。医療法人社団KNI(Kitahara Neurosurgical Institute)理事長。東京大学医学部を卒業後、同大学病院脳神経外科にて研修。1995年、東京都八王子市に北原脳神経外科病院(現・北原国際病院)を開設。救急・手術から在宅・リハビリテーションまで一貫した医療を提供すべく、現在は医療法人社団KNIとして八王子市内に4施設、宮城県東松島市に1施設を経営している。開設当初より、「世のため人のため より良い医療をより安く」「日本の医療を輸出産業に育てる」の2つを経営理念に掲げ、より多くの人の“幸せ”のため、「医療を変える」数々の斬新な取り組みに挑戦しつづけている。特にカンボジア、ラオス等の海外において「総合生活産業としての医療」を輸出するビジネス的な試みは、大きな注目を集めている。著書に『あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?』(ダイヤモンド社)、『「病院」がトヨタを超える日』『「病院」が東北を救う日』(以上、講談社+α新書)。著者の活動情報はこちらから。
では、こう考えてみてください。
たとえば、少子高齢化の問題。
2015年は、いわゆる団塊の世代(昭和22年〜24年生まれ)が65歳以上になる年です。全人口に占める高齢者の割合は、約27パーセント。4人に1人が高齢者という計算になります。これが2035年になったら3人に1人(33.4パーセント)が高齢者ですから、まさに老人国家です。
この問題を語るとき、多くの人は医療費や年金をはじめとした社会保障費の文脈で議論を進めます。たしかに、膨れあがる社会保障費をどう捻出していくかは、大きな問題です。しかし、少子高齢化にはもっと大きな問題が隠されていることを忘れてはなりません。
私自身、該当年齢に近づきつつあるからわかるのですが、これくらいの年齢になると、人間は著しく物欲が減退していきます。ファッションには無頓着になり、メタボが気になるから食事も質素になる。車は近場に出かける軽自動車で十分だし、家を新築する必要もない。ほしいものといえば、健康と孫のおもちゃくらいなものです。