スタートアップの成功ストーリーが
エコシステムを動かす

――シンゲルさんはサムライインキュベートに集まる若い起業家たちとお会いになるだけでなく、経済同友会のメンバーとも懇談されました。その感想をお聞かせください。


日本のビジネスリーダーたちは日本経済を次の段階に引き上げるために何をすべきか、真剣に考えていると思いました。重要なのは、日本は歴史上二度も自国を再生させていることです。明治維新と第二次世界大戦後のことです。「もう一度日本をよみがえらせることができるだろうか」と言う人には、これまで二度成し遂げたことが可能であることの何よりの証拠です、と申し上げたい。

ただ、今回の場合は成功体験が障害となっています。「成功をどう乗り越えるか」という課題は非常に特異なものです。成功した歴史と再生の必要性という組み合わせは、これまでどの国も経験していないことではないかと思います。

一方で、成長しなくてもいいのではないかという意見もあります。しかし経済活動は自転車をこぐようなもので、こぎ続けなければ倒れてしまう。これだけ変化の激しい世界で経済成長を諦めるのは危険なことだと思います。それが今、日本政府や経済界がイノベーションに注目している理由でもあるのでしょう。変化の速度が加速度的に増していることに皆、気づいている。そのなかで何とか成長していこうとしています。

今、日本ではスタートアップが数多く誕生し、ベンチャーキャピタルやインキュベーターも増えています。そうした中で牽引役となるような成功企業が出てくることが非常に重要です。たとえば楽天のようなIT企業の成功ストーリーはエコシステムの重要なファクターです。これが一つのモデルとなって、後に続こうとスタートアップが生まれてくるし、成功事例が増えればそこに投資しようというVCやエンジェルも増えるのです。