「技術はあるけど、売れない」そんな中小企業の悲哀を聞いたことがないでしょうか。企業にとって、営業力は生命線。しかし、営業力を養う体力もなく、前出の言葉につながるのです。今回、ご登場いただくのは、町工場で働く二代目社長。お客様のオーダーに合わせて受注・開発、クリエイティブを要求される仕事です。基本的にお客様の要望をいかに聞けるか、これにつきます。これは、コンシューマー営業でも高度なソリューション営業でも本質は変わりません。営業力を身に付けて、起死回生を果たした事例を、「アプローチ」のステージにてご紹介します。

アプローチで、お客様を「前のめり」の状態にする

 アプローチとは、お客様にアポイントを取り、面会の時間をある程度確保した状態で、営業マンがお客様と話し合える状態です。と言っても、お客様は営業マンの話を完全に聞く態勢にはなっていません。あくまでも、許可をいただき、意見も聞きながら話し合える状態です。このことをアプローチでは理解することが重要です。

 したがって、アプローチでは再度お客様のことを聞き、自社の商品に対する欲求を引き出し、お客様が営業マンの商品に対してしっかりと聞いてみようという姿勢をつくり上げることです。言葉を換えて言うなら、お客様を「前のめり」の状態にすることです。

 また、お客様自身のことを知り、営業マンのことも知ってもらい、互いのことをわかりあうことで、風通しのよい人間関係をつくり、お互いが本音で話し合える環境を整えることも重要です。その上で、商品についての説明であるプレゼンテーションを聞く時間を再度確保してもらうことです。

 本書では、「なぜ、会っていただいたのですか?」「なぜ、このお仕事をされるようになったのですか?」の演習を設けています。

◆事例◆
東陽精工株式会社 代表取締役 笠野晃一さん

 私は大阪の町工場の2代目です。社員30人のアルミダイカストという金属鋳造の仕事ですが、人も少ないので営業や取引先との打ち合わせはほとんど私の仕事です。

 当社は下請け仕事が多く、メーカー直接の取引がほとんどない中、必死の思いで営業し、なんとか毎年1件ぐらいは新規獲得。ところが年の瀬には、2件のメーカーとの契約が打ち切り。結局、終わってみればマイナス1件。増えるどころか目減りしているというのが2年前までの状態でした。