日本人がもっと敏感になるべき
日本の国益とアメリカの本音

――スパイと言えば北朝鮮、中国、ロシアというイメージがありますが。

 そういった国のスパイが日本にいるのは、もう想定内でしょう。それともう一つ、今回小説内の事件で公安が動かないのは、公安とアメリカはセットだからです、アメリカが関与している売国活動を摘発できるのは、東京地検特捜部しかないと考えました。

――では、日本の〝真の敵〟はアメリカということに……?

真山 それは、ぜひ作品を読んでください(笑)。

――そう言えば、『ハゲタカ』シリーズでも、アメリカがしばしば鷲津の巨大な敵として立ちふさがります。真山さんのアメリカ観をお聞かせください。

日本は将来の生き残りを賭けた正念場にいる。<br />だからこそ、今後10年で昭和史に取り組んでいく「どこまでもアメリカに追随するのは、どうなのか」(真山さん)

真山 アメリカのおかげで日本が豊かになったのは間違いありません。その一方で、どこまでもアメリカに追随する日本という国のあり方は、どうなのかなと思っています。

 日本を守るために米軍基地があると勘違いしている日本人は多いですけれど、アメリカは自国を守るために軍隊を置いているにすぎません。だから、もう少し日本人は、なぜアメリカがこういうことをしているのか、冷静に考えるべきだと思っています。

――アメリカの国益とは何か、ということですね。

真山 日本人は、アメリカが日本を好きだと思っていて、アメリカが一生懸命やってくれるから恩返ししようとしていますけれど、アメリカは日本なんてなんとも思ってません。ただの道具です。外交も、スパイ活動も全部含めて、それが国家なんですよ。スノーデン事件でNSA(アメリカ国家安全保障局)の情報収集の手口が発覚し、CIA(アメリカ中央情報局)がドイツのメルケル首相の携帯を盗聴しているという疑惑がありましたが、それはひどい話でも何でもない。当たり前です。

 『ハゲタカ』の取材の時にも聞きましたが、日米貿易交渉の時は、日本側の作戦ルームに盗聴器が仕掛けられていて、日本の戦略は全部筒抜けだったそうです。そういうことを日本人は知らなさすぎます。

――お人好しが過ぎる。

 国家が一番大事にしているのは自国民で、国民を食わせなきゃいけないんですよ。それが一番わかりやすいのがアメリカです。だから、個人としての日本人とアメリカ人は、友情をはぐくめるかもしれないけれど、国同士の関係はそうじゃない。日本はその点甘すぎると思っています。アメリカが日本のためにプラスになることをやってくれるとしたら、それは最終的にアメリカの利益になるからです。そのことを忘れてはいけないと思います。