真山 歴史小説はだいたい明治で止まっているでしょう。今の時代から振り返る大正以降の歴史は、すごく大事だと思っているので、この10年で取り組んでいきたいです。
こう言うと、未来を見通して書いているはずの作家が、なぜ過去に遡るんだって、よく編集者に言われます。でも、過去を知らないで、どうして未来を書けるのか。とりあえず最初は勉強しながら、この計画に乗ってくれる出版社と一緒にやろうかなと思っています。
隣国とうまくいかない国なんて
もうそれ自体がダメ
――きょう真山さんには、70年前の戦争を書くべきだと言おうと思ったんですが、まさにそういう問題意識があると聞いて、ああ、やっぱりなと思いました。
真山 戦争を単なる英雄物語にしてほしくないんですよ。戦争は外交の延長でもあるんですよね。そのことがわからない人が、戦争賛成にせよ反対にせよ、情緒的な物語を語るのは、非常に良くない。とくに、戦争体験がない人は、情緒に走って「じゃあ、国のために命を張るか」と考えてしまう。戦争体験者はどんどん少なくなっているから、そんな時代が、すぐそこに来てしまっている。
もうひとつ、これからは東アジアと日本の関係性が、すごく重要になってくると思うんですね。
アメリカのプレゼンスを下げるためにも、東アジア諸国と日本がいがみ合うなんて、ありえないです。中国や韓国は、本気で日本のことを憎んでいるわけじゃないですよ。もしそうなら、日本の商品は全て排斥されるはずです。日本はアジアから引っ越せないんです。隣国とうまくいかない国なんて、もうそれ自体がダメだと思っているので。
こういう考え方がクルッと回ると、「大東亜共栄圏」になるという人もいるかもしれない。いずれにせよ、東アジアのことをちゃんと理解できてないから、歴史観もずれてくる。とにかく誤った歴史認識を何とかしたいんです。
――これもまた、2000年代にデビューした作家の宿命だと思いますね。もう一度「あの戦争」に向き合うというのは。
真山 そう思います。
――しかも、2020年がひとつの節目となる。
真山 そうですね。東京オリンピックまでに形にしたいと思います。