(2)米国、あるいは財務省、厚労省との何等かの意見調整はあったのか。

 米国はともかく財務省だけでなく厚労省とも事前の調整はあったに違いない。

 塩崎恭久厚労相は、追加緩和について「衆院本会議を出てきてから初めて知った」と語り、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針の改定とは「全く関係ない」と強調した。

 だが、日銀の国債買い入れ増額規模とGPIFが手放す国債が共に30兆円と合致しているのを単なる偶然と言うのは無理がある。いよいよ日銀は財務省の従属機関に成り果てるのだろうか。

大企業と中小企業、大都市と地方……
多面的な経済格差進行の恐れも

(3)もちろん、日銀が今回の決定で目指しているのは設備投資と個人消費の順調な増加だろう。しかし、そうはならない可能性が高いのではないか。むしろ大量の資金の大半が株式や不動産市場に流入し、資産バブルを招く恐れは消えない。

 個人消費では、急激な円安によって国民生活を一段と圧迫することになれば、消費税再増税は逆に一層困難になるだろう。むしろ、そうなる可能性が高いように思う。

(4)多面的に経済格差が拡大し、“中間層”不在の社会構造の形成を助長する恐れがある。

 現在の日本では、おおむね五段階の経済格差の拡大が進行している。

(A)大企業と中小企業、(B)製造業と非製造業、(C)輸出産業と内需産業、(D)大都市と地方、(E)資産家と一般人。いずれも前者が伸長してその差を拡大する傾向にある。それをさらに助長しているのが大がかりな異次元の金融政策ではないか。

(5)そもそも金融政策が実体経済を牽引しようとするのは本末転倒ではないか。その効果にはおのずから限界がある。黒田総裁は“物価上昇率2%”のために「できることは何でもやる」と豪語するが、無理をして失敗に終わったらどうするのか。有効な出口戦略を持たずに突進すれば二度と引き返せなくなる。少なくとも金融政策の展開は、意地を張らずに戦々兢々と進めてほしい。「カーブの終わりをよく見て走る」べきだ。そうでなければ、追加緩和は意図に反する結果をもたらす。