私事で恐縮ながら今年の4月から、ある私立大学で学部生を相手に授業をすることになった。週に2コマ(1コマは90分)、2講座授業をするのだが、一つを「金融資産運用論」として、おカネの運用について教えることにした。
しかし、授業計画を考えるとなるとなかなか悩ましい。
一つには、学生の予備知識と理解力をどのくらいに想定したらいいのか。51歳の筆者が前提として想定する「高校で習ったこと」と最近のカリキュラムとのあいだには差があるだろうし、それ以上に心配なのは、「株式」とか「マーケット」といったものについてどんな直観的理解を持っているかだ。
たとえば「運用で市場平均に勝つのはなかなか難しいことだ」といった話について、ただちに「なるほど」と理解しなくても、「案外そういうものだろう」というくらいの想像力が働かないと、アクティブ運用だの「α」だのについて説明しても、何が話題なのかピンとこないに違いない。
筆者は、以前に社会人大学院で同じく「金融資産運用論」と題して運用のあれこれを教えたことがある。この場合、生徒の半分くらいが金融機関勤務で、ファンドマネジャーもいたので、話題の意味を伝えるのに苦労はなかった。しかし、後から学生のレポートを読むと、こちらがいちばんていねいに説明したつもりの問題(たとえば「市場の効率性」の周辺)でも、学生側の知識が少しも増えていないのがわかって、落胆することが多かった。知識とともに先入観を持ってしまうと、これを後から修正することはきわめて難しい。