タイトルに「大不況に克つ~」と銘打っている本コラム。09年2月に連載を開始した当初は、各方面で「百年に一度の」や「未曾有の」という形容までついて、世界経済や日本経済は崩壊してしまうのではないか、と危惧するほどの騒ぎであった。
いまはかなり回復したようで「よかった、よかった」──と、筆者の顧問先企業の経営者や従業員相手に語っていたら、彼らから袋叩きにあってしまった。
鳩山政権の登場で、製造業派遣禁止や最低賃金引き上げなどの政策が導入されようとしている。大企業であれば、子会社や下請け企業という「受け皿」へ余剰人員を押しつけることもできるが、自身に受け皿を持たない中小企業は、これから「雇いどめ」の修羅場を迎えると言っても過言ではない。
コンサルティング会社などが開催する、人員整理のための労務対策セミナーが活況なのも頷ける。これから本格的に解雇の嵐が吹き荒れようとする状況下で「よかった、よかった」と簡単に言って欲しくない、というのが「彼ら」=中小企業の言い分なのだ。
中小企業を苦しめる
“消えた”大企業の在庫の行方
中小企業にとって問題なのは、ヒトの問題だけではない。マスメディアなどではマクロ経済指標を持ち出し、09年以降は在庫の縮減が進み、景気回復の端緒が見えるという。ところが、中小企業の側からいわせると「とんでもないこと」だ。
大企業の在庫が減っているのは、需要が回復して商品や製品が売れているからではない。実際は、下請け企業から納品された「部品」を、下請け企業に戻すことによって、元請け企業では在庫の圧縮が図られている。
これを「出戻り」という。業界によっては、もっとすごい隠語があるようだが、それは差し控えておく。いずれにしろ、大企業からヒトやモノを押しつけられている中小企業の経営は、いまや風前の灯火といったところなのである。
ヒトの問題は取り上げると微妙なものがあるので、今回は在庫の面から、景気が本当に回復したのかどうかを検証することにしよう。