【ルール2】
  社長の仕事は
「会長の心に火をつけること」と決める

 私の仕事は、父の心に火をつけることでした。
「こんなことをしたい」と相談し、方向性を伝えると、父はすぐ図面を引き始める根っからの職人です。クリエイティブに何かをつくりあげるのが大好きなのです。

 私が「ああしたい」「こうしてほしい」と伝えると、父は「俺を使うな」と怒りながらも協力してくれました。

 もちろん、父がつくったものがすべて完璧ということはありません。でも、父が築き上げた会社で、父が代表権を持っている限り、父がつくったものを活かすのが2代目社長である私の仕事だと思っていました。

【ルール3】
朝8時30分からの「朝15分の儀式」

 私が取締役社長になってからは、何か新しいことをやるたびに、父に対して一生懸命説明し、説得しました。しかし、職人気質の父は、人の話を聞くのが嫌いで、なかなか耳を傾けてくれません。

 そこで父と話すときに、私が必ず守ったのは、

「大切なことを話すのは、毎朝8時30分から15分だけ」

 というルールです。

 朝を選んだのは、夕方になると疲れてしまうからです。かつて私が夕方になってから父に、「ちょっといいですか?」と声をかけると、話を聞く前から不機嫌で「うるせいよ」と怒られてしまいました。

 そのときは「相談したいだけなのに、なぜ怒られなければならないのか」と不満に思っていましたが、いまでは父の気持ちがよくわかります。15分だけと決めたのは、「何分で話を切り上げる」と決めて、お互いに集中できるからです。

 打合せ事項が多いときには、「もっと時間がほしい」と思うこともありましたが、基本は15分しか話しません。むやみやたらに長く話すとこじれるからです。時間を区切り、一定の時間内で自分のやりたいことを説明し、最後にYESかNOかをジャッジしてもらいます。

 このとき工夫したのは、座る位置です。

 お互いに向かい合った状態では座らず、必ず父の真横に座ります。対面すると、対決する雰囲気になりますが、横に座って資料に向かうと、同じ課題を共有する空気が生まれます。そして、2人で資料を見ながら、

「実はこういうことをしたいと思っています。これをやると、こういう結果になります。必要な経費はこのくらいです」

 など、手短かに説明します。
「朝15分の儀式」は取締役社長だった10年間、毎日続けました。15分しか話せない状況をつくることで、私のプレゼン能力も上がった気がします。