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武田薬品工業の2026年3月期第2四半期決算は、売上高2兆2195億円で前年同期比6.9%減となり、純利益は1124億円と同40%減となった。約6兆円もの巨額資金を投じてシャイアーを買収する前と比べ、株価は低迷したままだ。その要因について一部の市場関係者は、最近めっきり提示されなくなった武田薬品自らが目標を定めた「ある財務指標」の未達成にあると指摘する。特集『金利上昇、トランプ関税、人手不足で明暗 半期決算「勝ち組&負け組」【2025秋】』の#2では、未達成の背景などを詳細に解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ウェバー社長CEOの「最後の通期決算」の見込みは
売上高は4.5兆円、利益ベースではやや寂しい
製薬最大手、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)の退任まで1年を切った。ウェバー氏は2026年6月の定時株主総会をもって退任し、現在執行役員クラスでグローバルポートフォリオ ディビジョン インテリムヘッドのジュリー・キム氏が後任社長に就く予定だ。
武田薬品の26年3月期第2四半期決算は、売上高2兆2195億円(前年同期比6.9%減)、営業利益2535億円(同27.7%減)、純利益1124億円(同40%減)と軒並み前年同期比割れとなった。通期予想については、売上高が4兆5000億円で前期比1.8%減と落ち込む見込みだが、純利益は1530億円の同41.8%増と、利益面については反転を見込んでいる。
15年から社長CEOを務めるウェバー氏がフルでリードする最終年度にしては、やや寂しい内容だ。売上高は過去最高となった25年3月期と同程度を見込むものの、利益ベースでは21年3月期~23年3月期を下回っているからだ。
近年の武田薬品は、大手の議決権行使助言会社との“バトル”が定時株主総会前の恒例行事となっている。低いROE(自己資本利益率)がやり玉に挙がっているためだ。24年3月期のROEは2.11%であり、25年3月期はさらに低下して同1.52%となっている。
それに対して飯島彰己取締役会議長(三井物産元社長)は、「変革の過程において、戦略的M&A(企業合併・買収)に伴う取得原価の配分といった企業結合会計により、ROEのような特定の財務指標に影響が及ぶ場合があります」や、「短期的な財務ベース上の利益指標だけではなく、急速に進化する世界の医薬品市場において、将来に向けて武田薬品を真に競争力のある企業へと変革させたウェバー氏の功績を、より包括的にご評価いただきますようお願い申し上げます」などと擁護する論陣を張ってきた。
まるで、武田薬品の「大変革期」を言い訳にするかのようだが、これではウェバー氏の経営手腕について水掛け論にしかならない。ならば、ウェバー氏が自ら立てた目標値に基づいて評価するのが公平だろう。
実は、武田薬品には、約6兆円という巨費を投じたアイルランド・シャイアーの買収を機に、自ら目標を掲げた「ある財務指標」がある。だが、直近の決算でもその財務指標は目標に遠く及んでいないのだ。この事実を知る一部の市場関係者は、株価低迷の理由はそこにもあると指摘する。
次ページでは、ダイヤモンド編集部が独自検証した「ある財務指標」の結果を示し、さらに目標に及ばない三つの要因について明らかにする。







