2003年に当時のシュレーダー首相が「アジェンダ2010」を掲げ、財政赤字の削減のために、リスクを取って構造改革を進めることになりました。社会保障における社会扶助を一本化しその全体額を削減しました。また雇用制度における無期限の失業給付を中止し、職能訓練の拡充にシフトしていきました。これによって当時10%あった失業率は下落しました。

 さらに、企業に対しても、法人税の引き下げ、株式の持ち合いをやめるなど収益性を高める改革を行いました。財政は好転し、景気も徐々に良くなっていきました。このような構造改革には国民の痛みを伴うものです。成果が出るまで時間もかかります。その後、シュレーダーは2005年の選挙でメルケルに負けましたが、2006年からドイツ景気は著しく好転しました。シュレーダー曰く「改革を断行することの方が首相に再選されるよりも重要」だったのです。

 最近、ドイツは「インダストリー4.0」(第4次産業革命)としてさらに産業の改革をすすめており、「考える工場」をつくることで生産工程からムダを徹底的に省いています。

 現在、米日英ではゼロ金利を超えて「量的金融緩和政策」が導入されています(米国は量的金融緩和政策からの脱却=正常化に向かっていますが)。しかし、ドイツの影響力が強い欧州では、ゼロ金利すらまだ導入されていません。

原理原則を貫くドイツは
欧州経済を救えるか

 欧州での金融政策はECB(欧州中央銀行)が行っています。ドラキ総裁はイタリア出身であり、量的金融緩和もその一案として議論が進んでいますが、導入は決定されていません。そもそも、ECBが加盟国の国債を購入する「量的金融緩和」は、EUの国際条約「リスボン条約」で原則として禁じられているのです。「中央銀行による債務の肩代わり(財政ファイナンス)」 になるからです。さらに、ドイツは国債を買い取れば財政赤字の穴埋めにつながり、ECBの独立性も揺らぐと訴えています。その主張はきわめて真っ当です。

 日本が行ったように国債の買い取りはその代金として資金供給を行うことになり、通貨価値の低下をもたらしインフレと通貨安をもたらします。ドイツは第2次世界大戦のトラウマがベースとなり、財政赤字の拡大も、量的金融緩和も抑制されているというわけです。しかし、ECBはドイツ以外の国も参加しており、市場では、米日英型の量的金融緩和を欧州に期待する向きも多いのもまた事実であり、ドイツの考えを今後どこまで貫けるかは不明です。