日本でもよく知られる英国の高級ブランド「バーバリー」。その多くは三陽商会がライセンス生産しており、同社の売り上げの半分以上を占める大黒柱だ。1970年に日本国内での生産・販売に関するライセンス契約を結んだ三陽商会は80年以降、じつに20年にわたる長期契約を結んできた。
ところが異変が起こった。2020年までのライセンス契約が15年までに短縮され、16年以降は新たに見直すことになったのだ。
これに対して三陽商会幹部は「詳しくは言えないが、経済環境が激変し先行きが不透明となるなか、長期契約の是非を検討した。その結果、見直すことで合意したということ」と歯切れが悪い。
関係者の話を総合すると「バーバリーは期間短縮というムチの代わりに、三陽商会にアメを与えた」という構図が透けて見える。
アメというのは、三陽商会が企画し、バーバリーの許可を得て生産・販売している20代や30代向けブランド「バーバリー・ブルーレーベル」や「同ブラックレーベル」のアジア展開だ。
そもそもは雑貨の輸入販売のために設立されたバーバリー・インターナショナル(バーバリー51%、三陽商会29%、三井物産20%出資)を通じ、これらブランドを中国などアジアに拡販することをバーバリーは認めたのだ。
じつはバーバリー自体の業績も思わしくない。09年3月期は工場閉鎖などリストラ費用がかさみ、990万ポンドの営業赤字となった。バーバリーにとっても、中国市場は今後の生き残りがかかった期待の星。三陽商会に対して「16年以降のライセンス契約を楯にして、中国ビジネスに本腰を入れさせたい」(関係者)という狙いがあると見られる。
長期契約見直し合意の裏には、中国ビジネスをめぐる思惑があったのである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子)