──米国が日本に求めているものは何でしょうか。

 そういう状況の中で、アメリカが日本に対して要請する一番大きな要素は何かというと、拠点である日本自身をしっかり守るということです。その基本的なニーズ、戦略的なニーズは、相手がソ連から中国に変わっても、全く変わっていない。

 ですから、アメリカが引く分を日本が肩代わりするというよりは、むしろ日本が自分をしっかり守ってほしいというのが、恐らくいちばん大きなニーズであるはずです。

 ではその日本という国をどう守るのか。

 日本は、南北には長いけれども東西には非常に細い、海岸線がやたら長いという地理的な特性があります。非常に守りにくい、われわれの言葉で「脆弱」と言いますが、ミサイルなどを撃ち込まれたら非常に弱い立場にいる。

 だから、日本自身をどう守るかを考えたときに、できるだけ紛争を局地化しなければいけない、そして早期に終結しなければいけないというのが絶対的な要請なんです。

──集団的自衛権の行使は、それにそぐわない、と。

 そうした全体の流れを考えたときに、軍事情勢が厳しくなればなるほど、原点に立ち返った防衛戦略を考えなければいけない。その答えが集団的自衛権かというと、私は違うだろうと思います。集団的自衛権でアメリカの船を助けている暇があったら、日本自身を守れということです。

 典型的なのが、15の事例の中にある、アメリカのイージス艦が飛んでくる弾道ミサイルを警戒しているときに、それを守るというものですね。日本にはミサイル防衛ができるイージス艦は、6隻しかない(今8隻に増やそうとしていますが)。一方アメリカは三十数隻あります。そこでどういう役割分担になるかといえば、日本の基地は日本が守れ、グアムやハワイはアメリカが守る、と。日本が自分の防衛をほったらかして、グアムを守りに出かけますなんてことは、全く想定できない。

 そういうことからしてあの15事例はリアリティがないし、日本の安全保障の、地政学的な要請にも合っていない。

 いちばん重要なのは、(集団的自衛権による)抑止力に関して、楽観的なシナリオしか考えていないことですね。これはアベノミクスにも共通している。お金を回せば経済活動が活発になって、賃金も上がって、税収も増える、という。それは一つのシナリオではあるが、経済でも安全保障でも相手があることです。経済ではマーケットという相手がある。その中で、うまくいかないシナリオを、リスクとして、考えなければならない。