短期の利益のために投資しない
孫社長の買い物スタイル

──孫社長が投資家として発揮する、優れた「買い物(M&A)」の極意とは何でしょうか?

 それは非常にシンプルで、それは彼と起業家たちの強い絆や繋がりにあります。そうでしょう? 何兆円規模のグローバル企業を経営しながら、孫さんのような真似をするのはほとんど不可能です。彼が起業家たちを魅了するのは、彼自身がいまだに起業家精神を忘れていない経営者だからではないでしょうか。

 IT産業に投資するのであれば、起業家たちと繋がるのは極めて重要な能力なんです。なぜなら有能な起業家たちというのは、誰から出資を受けるのか、多くの選択肢を持っているからです。そんな彼らが孫さんと面談をすると、「孫さんからカネ(出資)を受け取りたい」と言うのです。「孫さんは自分たちのビジネスを分かってくれている。ゼロから創業する大変さも知っているんだ」と。

 彼は起業家と通じており、彼らのビジネスを手助けしてあげるのがとても上手です。もう一つ、付け加えるなら、短期の利益のために投資しないということでしょう。中国のアリババがその好例です。彼は長い間、アリババのビジネスを信じてきました。

 それに対し、私たちがアリババの存在を知ったのは、おそらく過去12ヶ月以内ではないでしょうか?(笑)

──元グーグルの最高幹部であるニケシュ・アローラ氏も、ソフトバンク副会長として海外企業の買収を指揮する立場に就任しました。そことの協業はどうなるのでしょうか?

 ニケシュさんとのチームとは、常時、情報のやりとりをしています。ただ私たちはどちらかといえば米国のベンチャーなど小さな企業に焦点を絞っており、彼らはよりグローバルに成長している買収候補を見渡しています。

 また我々は通常、3年から8年ほどの期間で投資回収をするのが基本戦略になります。一方でニケシュさんのチームはより中長期的な戦略に沿って、孫さんとソフトバンクグループの次の10年、20年をさらに飛躍させる役割を担っています。極めて重要な仕事で、大きな権限を持っていると思っていいですよ。

──最後に。孫社長を歴史上の人物に譬えるとすると、どんな人が思い浮かぶでしょうか。

 彼はとてもユニークな人物です。せっかくなので、(自分が拠点にしている)マサチューセッツ州のボストン出身の人物を挙げさせてください。第2代目の米大統領であるジョン・アダムズです。

 とてもビジョンがあって、権力に立ち向かうことを恐れない人物でした。そして英国の属国のようだった米国の“国のかたち”を変えました。孫さんも情熱家であり、時に政府とも戦う勇敢なところがが重なるんですよ。